池辺晋一郎 プロデュース 日本の現代音楽、創作の軌跡 第5回
1933年生まれの作曲家たち

先達の創作を次代へ引き継ぐ

 東京オペラシティ文化財団ミュージック・ディレクターの池辺晋一郎がプロデュースし、2019年よりスタートさせた「日本の現代音楽、創作の軌跡」は、開催年の90年前に生まれた作曲家の作品を豪華演奏家陣によって届けるという企画。第5回となる今年は1933年(昭和8年)生まれの作曲家をフィーチャーしている。 “昭和一桁世代”は少年期に戦争を体験、敗戦後の混乱期に音楽を志し、戦後の文化の復興と隆盛を先陣に立って導いてきた。

 33年生まれの最重要作曲家は三善晃と一柳慧だが、いずれも大きめのアンサンブル曲が取り上げられる。三善の「ノクチュルヌ」は傑作を次々に書き下ろしていた70年代前半の五重奏曲。昨年亡くなった一柳の「リカレンス」(1977〜78)は七重奏で、60年代の前衛的な作風からミニマリズムに転換している。今井重幸の「青峰悠映−序奏と田園舞−」、服部公一の「古 新羅人 讃」はいずれも韓国の音楽から刺激を受けたトリオで、アジアのエキゾティシズムが香る。さらに古典音楽の理論の延長に自らの創作の道を切り開いた原博「ピアノ・ソナタ第3番」のほか、辻井英世「ナフタ」、神良聰夫「弦楽四重奏のための3つの小品」がプログラミングされ、昭和の創作の多様な諸相が浮かびあがるだろう。

 演奏陣も現代音楽の演奏で目の覚めるような切れ味を見せる成田達輝(ヴァイオリン)をはじめ、高木綾子(フルート)、中野翔太(ピアノ)、辻本玲(チェロ)など、トップ奏者たちが結集する。昭和の創作を次代へと引き継ごうとする池辺の意図が透けて見える。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年7月号より)

2023.7/12(水)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp