飯森範親と日本センチュリー響のハイドン全集第20弾。交響曲第74番は、48歳のハイドンの充実ぶりが聴ける。冒頭ソナタ楽章は、展開部が充実している。とりわけ後半の豊かな動機労作からの転調楽句は、次第に別世界に連れていかれるかのよう。飯森は原則的に反復をすべてやるので、聴いていて細部を確認しやすい。終楽章、第1主題後半のトゥッティでの、生命力溢れる躍動ぶりが実に爽快だ。第56番はトランペットとティンパニが加わって華やかで祝祭的となる。終楽章の昂揚は狂暴でさえある。第40番のフーガ終曲は、形式にとらわれず、対位法を自由自在に展開して、変化に富んだ構成が楽しめる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
SACD『ハイドン:交響曲集 Vol.20 /飯森範親&日本センチュリー響』
ハイドン:交響曲第56番、同第40番、同第74番
飯森範親(指揮)
日本センチュリー交響楽団
収録:2020年10月、ザ・シンフォニーホール 他(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00813 ¥3850(税込)