新しいフェスティバル/トーキョーを体感したい
新体制で心機一転、新しいスタートを切ったフェスティバル/トーキョー。以前は演劇祭のイメージも強かったが、今回はダンス作品も多くラインナップされている。
ひとつは難曲の『春の祭典』。なぜ難曲かというと、ストラヴィンスキーの曲があまりに強く魅力的すぎて、これまでにも多くの振付家が曲を使いこなせなかったり、曲の魅力に頼ってしまう落とし穴に陥ってきたからだ。
今回振付に挑むのはモモンガ・コンプレックスの白神ももこ。「インテリになりすぎず、曲の根底にある情緒や美しさ、そして自分たちのリズム感を大事にしたい」という。
美術は毛利悠子。日常雑貨や古道具などを使い、動いたり音を出すインスタレーションを作るアーティストだ。「お互いにいま感じていることを交換して、それぞれの中で変換されて出て来たものを、さらに深みと面白みとして作品に活かしていく」と白神。毛利の提案した素材を白神が選び、宮内が発想したものを、ダンサーたちとともに試すというトライアングルが回り出しているという。
音楽監督は宮内康乃。呼吸に注目した曲や、日本古来の楽器や聲明などにも着目したプリミティブな曲も発表している。”春のいけにえ”が主題のこの曲を宮内がどう扱うか興味は尽きない。「声というプリミティブな部分から本来の人間の息づかいを感じられるような作品にしたい」と語る、3人の女性アーティストの視点による新しい『春の祭典』が期待できそうだ。
もうひとつはダンサーの森川弘和と舞台美術家の杉山至のコラボレーション『動物紳士』。変わったタイトルである。マイムやサーカスを学び関西のモノクロームサーカスから独立した森川は、優れた身体バランスと親しみやすい豊かな表現力を持っている。杉山は青年団の舞台美術家で、第21回読売演劇大賞の最優秀スタッフ賞受賞者。このコンビがどんな舞台を創り出すのか。森川曰く、「基本的にはノープランです(笑)。杉山さんのアイディアに僕が身体を張って挑戦し、積み重ね、それをよりクリアな表現にするために忍耐強く検証しています。ジャンルも感性も違う相手を受け入れたときの互いの変化が非常に刺激的です」
資料には「とことん遊べ!」とある。これは「美術と身体の遊び」ということなのだろうか。
「杉山さんのアイディアは、身体に制約や負荷をかけるツールとも言えます。それをどう捉えて可能性を見いだしていくか。既成概念に捕われず自由にいるためには、遊びごころが大切なんです。舞台上にいる “僕という生きもの” が様々に遊ぶ姿を、お客さん一人ひとりにも楽しんでもらいたいですね」
2人に共通するのは、コンテンポラリー・ダンスを堅苦しい物と捉えるのではなく、楽しくて、さらに深い世界を描く表現として使いこなそうとしている点だ。
新しいフェスティバル/トーキョーで、新しい時代が開く姿を目撃したい。
取材・文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)
『春の祭典』11/12(水)〜11/16(日) 東京芸術劇場プレイハウス
『動物紳士』11/15(土)〜11/24(月・祝) シアターグリーン BOX in BOX
問:F/Tチケットセンター03-5961-5209
http://festival-tokyo.jp