マレイ・ペライア(指揮/ピアノ) アカデミー室内管弦楽団

これ以上幸せなピアノ協奏曲はない

マレイ・ペライア ©Felix Broede
マレイ・ペライア ©Felix Broede

 間違いなくマレイ・ペライアは、常に来日が望まれるピアニストの筆頭格だ。昨年10月、彼は待望のリサイタルを行い、深く温かな円熟の名奏で満場のファンを魅了したばかり。1年後の今年10月に再び来日するのは、稀有の朗報というほかない。今度はアカデミー室内管と聴かせる弾き振り&指揮。当コンビでの来日は12年ぶりとなる。
 40年以上世界で活躍してきたペライアの、まさしく40年前に行った最初の協奏曲の録音が、マリナー&アカデミー室内管とのメンデルスゾーンだった。以来長き関係の中で、同楽団は彼が指を怪我した時期に指揮者として招き、2000年から首席客演指揮者に迎え、昨年も欧米各地で共演し絶賛を博している。今回は、互いの音楽性を知り尽くしたその絶妙なコラボを久々に味わえる。
 プログラムには、このコンビで最も聴きたいモーツァルトとバッハが並ぶ。モーツァルトは、イギリス室内管との全集録音が規範となっているペライアの代名詞。今回は、中でも彼の粒立ちの良い音が映える第21番だから、ますます嬉しい。明朗快活な快速楽章と往年の名画『みじかくも美しく燃え』で使われた至高の第2楽章…。これを聴けるのは幸せ以外の何物でもない。両者による録音もあるバッハは、協奏曲第7番。ヴァイオリン協奏曲第1番の編曲で生演奏の稀な同曲も、原曲との比較を含めて大注目だ。このほかメンデルスゾーンの佳作とハイドンの「驚愕」交響曲を、アカデミー室内管クラスで聴くのも貴重な体験となる。
 ここにあるのは、芳醇で心に染み入る珠玉の音楽。夢のようなひとときが待っている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

11/13(木)19:00 サントリーホール
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp

他公演
11/15(土)豊田市コンサートホール 問:0565-35-8200
11/16(日)鹿児島市民文化ホール 問:099-257-8111