ファミ・アルカイ(ヴィオラ・ダ・ガンバ) & 荘村清志(ギター) ~スペイン音楽の黄金時代 16&17世紀~

ガンバの未来を切り拓く次世代の奏者が巨匠ギタリストと共演

 ファミ・アルカイのヴィオラ・ダ・ガンバは、第一級のヴィオラ・ダ・ガンバとして愉悦に満ちたものだが、それだけではない。サント=コロンブ、マラン・マレやトバイアス・ヒュームの霊感を目の前に現存させるかと思えば、ジミ・ヘンドリックスやジョー・サトリアーニの情熱で聴く者を感電させもする。2016年、日本での初リサイタルを聴きに集まった方々なら、その噴き出る自由と喜びに、驚きをもって拍手を送ったことを覚えているだろう。

 シリア人の父とパレスチナ人の母のもと、セビージャで生まれたアルカイは、ルーツとボーダーをみつめながら、旺盛に表現の自由を求めてきたとみえる。パオロ・パンドルフォとヴィットリオ・ギエルミに学び、ジョルディ・サヴァールのエスペリオンXXIでも活躍する彼はまた、古楽アンサンブル「アカデミア・デル・ピアチェーレ」を自ら率い、2018年秋の王子ホールでも、作編曲や即興も交えた「スペイン再発見」の旅をくり広げてみせた。

 物語は続き、3度目の王子ホールでは、ギタリストの荘村清志との世代を超える対話で、「スペイン音楽の黄金時代」を訪ねていく。アントニオ・デ・カベソンやガスパル・サンスの生きた16世紀や17世紀が中心となるが、決して懐古的ではなく、現代の表現者どうしがいまの瞬間を果敢に生きるステージとなろう。それぞれの音楽的故郷たるスペインを、遥か時代を遡るように駆けながら、両雄の自由と情熱が燃え滾る、喜びの一夜となるに違いない。
文:青澤隆明
(ぶらあぼ2023年6月号より)

2023.6/9(金)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp

他公演 
2023.6/11(日) 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール(0798-68-0255)