今年27歳のマケラと、彼が2021年から音楽監督を務めるパリ管による初のCD。これはこの天才指揮者への圧倒的な賞賛にたがわぬ名演だ。「春の祭典」は、最初の部分から木管の雄弁さ、豊かな色彩、表情の細やかさに耳を奪われる。その後も音色美と鮮烈なリズムが全開。ギア・チェンジも巧みで、快速調で畳み込む部分などまさに胸がすくといった感がある。「火の鳥」も、全曲版の妙味を実感させる精緻で密度の濃い演奏。全体に野生的ではなくスマートな表現だが、細部まで息づいた、生気と躍動感に富んだ両曲は、当コンビの今後に大いなる期待を抱かせる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年5月号より)
【information】
CD『ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》《火の鳥》/クラウス・マケラ&パリ管』
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(1947年版)、同「火の鳥」(1910年版)
クラウス・マケラ(指揮)
パリ管弦楽団
ユニバーサル ミュージック
UCCD-45023 ¥3080(税込)