【CD】永訣の白い響/奈良ゆみ&椎名亮輔

 幅広い音楽性を誇るソプラノ・奈良ゆみと、音楽美学・音楽哲学の分野で活躍するピアニスト・椎名亮輔の名コンビによる、迫りくる“死”の予感がテーマの意欲作。ソクラテスの最期という設定のプラトン対話篇『パイドン』をクライマックスとするサティ晩年の交響的ドラマ作品が醸す不思議な抑揚感。コラール風ピアノを挟んで歌う聖なる〈魂の歌〉や伝記作者ジャネスの詩に書いた「夢のたたかい」等モンポウ作品のたたえる深い悲しみ。そのどちらも捨てがたいが、17歳で夭折したロシアの女性詩人クルマンの歌、かのメアリ・スチュアート女王の辞世、それぞれに作曲したシューマンの2作品も壮絶。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年5月号より)

【information】
CD『永訣の白い響/奈良ゆみ&椎名亮輔』

サティ:ソクラテス―声楽をともなう3部の交響的ドラマ/モンポウ:魂の歌、夢のたたかい/シューマン:エリザベート・クルマンの詩による7つの歌 この詩人の思い出に捧ぐ、メアリ・スチュアート女王の詩

奈良ゆみ(ソプラノ)
椎名亮輔(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-7292 ¥3300(税込)