沖澤のどか(指揮) 読売日本交響楽団

躍進著しいマエストロの深遠なプログラム

 2021年10月に読響にデビューし、スケール感のある演奏で評判を呼んだ沖澤のどか。ブザンソン国際指揮者コンクール優勝者であり、現在もっとも評価が高い若手指揮者が読響の指揮台に帰ってくる。

 今回の土曜・日曜マチネーシリーズには、聴き応えのあるプログラムを用意。示唆に富み、重厚ささえ漂う内容だ。

 演奏会は、壮大にしてロマンティックな大曲、エルガーのヴァイオリン協奏曲で始まる。ソリストを務める三浦文彰が、2年かけて準備してきた作品だという。若手スターとして歩んできた三浦が、さらに磨き抜かれた成熟のヴァイオリンを聴かせてくれるだろう。

 後半は、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と、R.シュトラウスの交響詩「死と変容」を続けて演奏するという。ユニークな試みだ。

 愛は死によってしか解決しないというテーマを先鋭的なスタイルで音楽化したワーグナー作品。この前奏曲は、楽劇の最後にあたる「愛の死」と組み合わせて演奏されることが多い。今回はその代わりに、死の葛藤から浄化(変容)へと至るシュトラウスの交響詩がマッチングされる。2人の作曲家の死生観を繋ぎ合わせることで、最後はより広がりをもった救済が導かれるのではないだろうか。

 それも、沖澤ならではの整えられたバランスから導かれるアグレッシブな音楽があってこそ。エルガーからシュトラウスまで、それぞれの作品に見合った陰影の彩度を深く表現する読響の実力にも期待したい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年5月号より)

第257回 土曜マチネーシリーズ
2023.5/13(土)
第257回 日曜マチネーシリーズ
5/14(日) 
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp