日本を代表するヴァイオリンの名手・安永徹が、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を“弾き振り”した2013年5月のライブ録音。記録が目的で市販は予定になかったが、22年に聴き返したところ、余りの名演のため、急きょCD化が決まったという。ピアノの市野あゆみを迎えてのモーツァルトの協奏曲は、独奏のニュアンスに、安永の率いるOEKがぴたりと寄り添い、このコンビによるデュオの名演を彷彿させる。かたや、ハイドン「V字」は、拍節感などは踏まえつつも、性急に過ぎぬテンポで音楽を進めつつ、最終楽章のコーダで一気に畳み掛けて、爽快な後味を残す。OEKが“アンサンブル”を名乗る理由が実感できよう。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2023年4月号より)
【information】
CD『モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番、ハイドン:交響曲第88番「V字」/安永徹&市野あゆみ&OEK』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調/ハイドン:交響曲第88番 ト長調「V字」
安永徹(コンサートマスター/ヴァイオリン)
市野あゆみ(ピアノ)
オーケストラ・アンサンブル金沢
収録:2013年5月、石川県立音楽堂(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-7979 ¥2750(税込)