古都の音景とクラシックの共鳴~「Kyoto Music Caravan 2023」開催記者会見

 今年、京都市では文化庁の移転(3/27業務開始)と京都市立芸術大学の新キャンパスへの移転(10/1開校)という2つの“大移動”がある。これを記念し、一大クラシック音楽イベント「Kyoto Music Caravan 2023」が、京都コンサートホール・京都市・京都市芸大・京都市交通局の四者共同主催で開催される。事業内容についての記者会見が3月29日、京都コンサートホールにて行われ、フルート奏者で京都市芸大副学長の大嶋義実らが登壇した。

左より:高野裕子(京都コンサートホール プロデューサー)、大嶋義実(京都市立芸術大学音楽学部 教授)、東川楠彦(北野天満宮 禰宜)、西岡成一郎(月桂冠大倉記念館 館長)、松浦俊昭(壬生寺 貫主)

 この4月から1年間かけて開催される本イベントでは、市内の11行政区で京都市芸大ゆかりの音楽家による無料コンサートが実施される(別途拝観料あるいは入館料が必要な施設あり)。幕開けは、世界文化遺産・仁和寺(右京区)で開催される「フルートオーケストラコンサート」(4/29)。おなじみのフルートやピッコロだけでなく、コントラバスフルートなどの珍しい楽器も加わり、総勢32名による絢爛な音色で新緑の古都を彩る。5月には月桂冠大倉記念館(伏見区)にてチェロ四重奏が演奏される(5/28)。日本有数の酒造メーカー・月桂冠の歴史が刻まれた同館で、芳醇なチェロのハーモニーが響き渡る。

仁和寺・金堂

 盛夏を迎える7月には43年の歴史に幕を下ろす京都市芸大・沓掛キャンパス(西京区)で「ありがとう沓掛キャンパスコンサート」が開催されるほか(7/1)、上賀茂神社(北区)ではフレッシュな若手らが金管五重奏を披露(7/22)。翌月には、壬生寺(中京区)の孟蘭盆(うらぼん)万灯供養会で、サクソフォン四重奏の演奏が奉納される(8/12)。一味違う賑々しい雰囲気でご先祖様の御霊が出迎えられることだろう。

壬生寺表門

 芸術の秋には、2ヵ月間に計5公演が開催される。10月には金戒光明寺(左京区)でのバロック室内楽(10/1)、智慧夢工房(南区)での弦楽四重奏(10/9)、梅小路公園(下京区)周辺の施設での声楽アンサンブル(10/14)。11月には隨心院(山科区)でのマリンバ&ヴィブラフォンのアンサンブル(11/11)、泉涌寺(東山区)でのフルート&ハープのデュオ(11/23)。個性豊かなアンサンブルの数々を味わいつつ、色づく秋の京都を満喫できる。

隨心院

 無料コンサートのトリを務めるのは、学問の神様・菅原道真公が祀られていることで知られる北野天満宮(上京区)でのピアノ三重奏(2024.3/10)。約1500本の梅が花開き、薫りに満ちた境内で、クラシックの名曲とともに春の訪れを感じることができるだろう。

北野天満宮 三光門

 11行政区でのコンサートの終了後には「スペシャル・コンサート」(3/30)が行われる。会場は、満を持して京都市芸大新キャンパスの堀場信吉記念ホール。内容は、京都でクラシック音楽を学ぶ子どもたちが一堂に会し、所属団体ごとに演奏を行ったのち阪哲朗指揮による合同演奏で締めくくるというもので、掉尾を飾るのにふさわしい。

京都市立芸術大学 新キャンパス外観

 大嶋は本イベントの端緒となった2つの“大移動”について、以下のように語った。
「京都が色々な文化の『交差点』になるきっかけになればいいな、と思っています。京都市芸大の移転コンセプトは『《テラス》のような大学を創る』というものです。《テラス》は内から外に開かれ、様々な人が行き交う場所。そのような場所を実現することで、多様な文化が蓄積されていき、その中から新しい芸術が生み出されると考えています。われわれの大学だけでなく、京都という街があらゆる文化が交わり新たな発信がされる場所になることを期待しています」

大嶋義実

 古都の神社仏閣や歴史的建造物がクラシック音楽のメロディで満たされる本イベントは、まさに日本と西洋の伝統文化が「交わる」好例。“大移動”で盛り上がりを見せる文化芸術都市・京都にさらなる華を添えることが期待される。

写真提供: 京都コンサートホール

Kyoto Music Caravan 2023 特設ページ
https://www.kyotoconcerthall.org/kyotomusiccaravan2023