熟成の音色に浸りきる
1977年にパリ・ベラン音楽コンクールを制し、翌年にはジュネーヴ国際音楽コンクールで日本人初の入賞。その後は自在で魅力的な独自のスタイルを武器に、ソロ・クラリネット奏者として第一線を走り続けて来た武田忠善が、デビューから35周年を迎えた。その記念のステージには、気心の知れた仲間たちを迎えて、愛奏するクラリネットのための佳品をずらりと並べ、その美音をたっぷりと披露する。
国立音楽大学を経て、フランス・ルーアン音楽院で巨匠ジャック・ランスロの薫陶を受け、特にフランス作品の解釈において、国際的に高い評価を得ている武田。多忙な演奏活動の一方で、東洋人としては初めて、パリ国立高等音楽院から招聘を受けてマスタークラスを開催するなど、世界中で後進の指導にあたっている。かたや、個人レッスンではなく、アンサンブル教育に主眼を置いた独自の指導法を取り、この点でも着実に成果を挙げている。
ステージでは、まず斎藤雅広(ピアノ)の共演を得て、ラボー「ソロ・ド・コンクール」とヴィドール「序奏とロンド」、ドビュッシー「クラリネットのための第1狂詩曲」、プーランクのソナタを披露。そして、水野佐知香(ヴァイオリン)と荒井章乃(同)、大野かおる(ヴィオラ)、藤村俊介(チェロ)という弦楽器の達人4人を迎えての、ブラームスのクラリネット五重奏曲で締め括る。クラリネットの名曲が一夜にして俯瞰できるのみならず、35年の熟成を経て、なお進化し続ける名手の“いま”を体感できる、貴重な機会となろう。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)
10/24(金)19:00 紀尾井ホール
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp