〈ウィーンからの風 15〉モザイク・クァルテット

艶やかで豊潤な響き

 オリジナル楽器による弦楽四重奏団の先駆的存在として、その可能性を切り拓いてきたモザイク・クァルテット。古楽界にありがちな「オーセンティックか、否か」ばかりに固執する姿勢とは一線を画し、楽器の考証やヴィブラートづかいなどはあくまで柔軟で、その自然さたるや、まずは「彼らの目指す室内楽の理想」がそこにあり、表現に最適な楽器がたまたまオリジナル楽器であったかのよう。エーリッヒ・ヘーバルト(第1ヴァイオリン)らニコラウス・アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの首席奏者で構成されたメンバーは、結成30年を経てなお不変。彼らの丁々発止のやり取りや、音楽的な会話の饒舌さは、いよいよ親密の度合いを増している。
 今回の来日ステージでは、モーツァルトの第17番「狩」、シューベルトの第10番、ベートーヴェンの第2番と、彼らの演奏歴のエッセンスのような佳品を披露。世界最高の名人集団が紡ぐ、艶やかで豊潤なピュア・ガットの響きに酔いしれたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)


10/25(土)17:00 トッパンホール 
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com