東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 特別演奏会 飯守泰次郎のブルックナー

円熟の巨匠と絶好調の楽団がおくる必聴の大作

飯守泰次郎 (c)K.Miura

 飯守泰次郎&東京シティ・フィルのブルックナーの交響曲…この文句なしに聴くべき公演が、同楽団の特別演奏会として行われる。日本に並ぶ者なきドイツ音楽の泰斗・飯守は、現在桂冠名誉指揮者のポストを持つ同楽団と25年の長きにわたって共に歩み、ワーグナーをはじめ数々のシリーズで多大な成果を挙げてきた。すなわち東京シティ・フィルは飯守の音楽作りを最もよく理解している楽団だ。その象徴が2021年の《ニーベルングの指環》ハイライト特別演奏会。そこでの壮大かつ奥深い音楽は多方面から激賞された。ブルックナーの交響曲も然り。当コンビは、1998〜2004年と12〜16年の二度ツィクルスを行い、大絶賛を博している。また飯守は関西フィルとの11年におよぶ全交響曲ツィクルスを22年に完結したばかり。7年ぶりとなる今回の東京シティ・フィルとの取り組みに絶大な期待が集まるのは、むろん言うまでもない。

 もう1つ重要なポイントが東京シティ・フィルの稀に見る充実ぶりだ。高関健のシェフ就任から8年を経て、アンサンブルの精度とサウンドの輝きが大幅に増している。今回の演目は、交響曲第8番と第4番「ロマンティック」。重層的でドラマティックな最高傑作と、明快で旋律美に溢れた人気作であり、前者は20年、後者は22年に高関が同楽団と精緻で堅牢な快演を残してもいる。80歳を超えて持ち前の重厚感と雄大さに味わいや行間の妙を加えた円熟の巨匠・飯守が、クオリティアップした今の東京シティ・フィルでいかなるブルックナーを聴かせてくれるのか? 歴史的名演の予感が強く漂う。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年4月号より)

交響曲第8番 2023.4/7(金) 
交響曲第4番 4/24(月)
各日19:00 サントリーホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp