インゴ・メッツマッハー(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

無調前夜の精緻な管弦楽書法と濃密な響きをたどって

 新日本フィル3月定期のプログラムはウェーベルン、シェーンベルク、ベルクと新ウィーン楽派の作曲家が並ぶが、彼らが無調に入る前の後期ロマン派的な響きや官能性を持つ作品で、難解ではという心配は無用。

 ウェーベルン「パッサカリア」は、作品1とある通り処女作で、取り上げられることも多く、理解されやすい作品。ベルク「ヴァイオリン協奏曲」は演奏機会も多いポピュラーな協奏曲。アルマ・マーラーと建築家グロピウスの娘で、ベルクが可愛がっていたマノンの18歳の死に際し作曲、『ある天使の思い出に』と追悼の副題を付けた。ベルクが書いた他のどの曲とも違う、胸が張り裂けんばかりの感情的なパワーを持っている。

 交響詩「ペレアスとメリザンド」は、シェーンベルクがマーラーやシュトラウスの書法に影響され書いた後期ロマン派風の大編成の作品で、約45分の大作。ドビュッシーのオペラやフォーレの劇付随音楽にもなったメーテルリンクの幻想的な愛と死の戯曲を基にしている。

 このコンサートには大きな期待を寄せたい。指揮は2013年9月から15年8月まで、新日本フィルのコンダクター・イン・レジデンスを務めたインゴ・メッツマッハー。現代音楽のスペシャリストで、その刺激と楽しさ、知性や魂に訴えるエネルギーを聴衆に伝えることを使命としている。ベルクのソリストは引く手あまたのヴァイオリニスト、クリスティアン・テツラフ。繊細さと強靭さを兼ね備え、クリスタルな美しい音色と鋭い切れ味が特長。望みうる最強の共演となるだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年2月号より)

第647回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
 
2023.3/4(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉 
3/6(月)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp