佐藤卓史(ピアノ) シューベルトツィクルス 第2回

シューベルトの内奥に迫る一大プロジェクト

 誠実さに満ちた深い作品解釈と、磨き抜かれた演奏技術が光るピアニスト佐藤卓史は、今もっとも期待される若手実力派の一人だ。そんな佐藤が、今年の春からスタートさせた一大プロジェクトが『佐藤卓史シューベルトツィクルス』である。短命ながら多作家であったシューベルトのピアノ独奏曲やピアノを含む室内楽曲を全て演奏するというシリーズで、15年程をかけ全30回で網羅しようという意欲的な取り組みである。これまでに国内外を問わず数々のコンクール受賞歴に輝く佐藤だが、中でも2007年にドイツのドルトムントで行われた第11回シューベルト国際コンクール優勝や、翌年のドイツ各地でのオール・シューベルト・プログラムによるリサイタル開催といった豊かな経験は、このツィクルスに繋がる重要な布石となっていることだろう。
初期のピアノ小品や幻想曲を取り上げた4月の第1回公演に引き続き、10月に王子ホールで開かれる第2回では、3つのピアノ・ソナタが演奏される。20歳のシューベルトがソナタというジャンルに本格的に意欲を燃やして作曲した第6番ホ短調D566(D506の「ロンド」付き)、内省的でシリアスな表情を見せる第14番イ短調D784、そしてシューベルト自身が第2楽章を好んで演奏していたというソナタ第16番イ短調D845である。学究的な好奇心を絶やさず、丁寧に紡ぎ出す佐藤の演奏で、どの楽章もじっくりと味わいたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

10/10(金)19:00 王子ホール
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp