朝比奈隆以来久々の大阪フィル定期のブルックナー「第5番」。尾高忠明は基本的にインテンポだが、時にテンポ変化で大見得を切る。冒頭楽章の2つの主題は、大阪フィルの弦が美しい。特に第2主題では深い内省が祈りにまで高まる。再現部に向けた高揚も凄まじい。アダージョの第2主題も朝比奈を思い出させる豊かさ。スケルツォは尾高の緩急の設計が巧く、ワクワクするような楽しさだ。フィナーレでは展開部の二重フーガが精緻で聴き応えがある。そしてコーダの金管コラールの頂点は壮大で、体の奥底から沸き上がるような感動がある。これは尾高の最高のブルックナーだ。朝比奈の伝統の見事な継承。
文:横原千史
(ぶらあぼ2023年1月号より)
【information】
CD『ブルックナー:交響曲第5番(ノーヴァク版)/尾高忠明&大阪フィル』
ブルックナー:交響曲第5番(ノーヴァク版)
尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団
収録:2022年2月、サントリーホール(ライブ)
フォンテック
FOCD9873 ¥3080(税込)