シンフォニーでアジアをつなぐ
広大で多様な文化が息づくアジア。そのアジアの大きさをオーケストラを通して感じることができるのが『アジア・オーケストラ・ウィーク』(AOW)だ。2002年に始まって以来、アジア太平洋地域の各国から、計15ヵ国46団体のオーケストラが参加している。今年も東京オペラシティ コンサートホールを舞台に、ホーチミン市交響楽団(10/5)、キョンギ・フィルハーモニー管弦楽団(10/6)、名古屋フィルハーモニー交響楽団(10/7)の3つのオーケストラが招かれる。
ベトナムのホーチミン市交響楽団は1994年に創立されたホーチミン市初のプロ・オーケストラで、2008年の初来日に続いての参加となる。指揮は創設以来同楽団の首席指揮者を務めるチャン・ヴォン・タック。ヴァイオリンを専攻した後、ベルギーのリエージュ王立音楽院とオランダのマーストリヒト音楽院で指揮を学んだという経歴を持つ。プログラムはド・ホン・クァン作曲によるオーケストラのための夜想曲「こだま〜いにしえからの〜」、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ベートーヴェンの交響曲第7番。お国ものと超有名曲との組合せは、AOWならでは。チャイコフスキーで独奏を務めるグエン・フー・グエンは、パリで学び、現在フランス国立管弦楽団の第2ヴァイオリン首席奏者という実力者だ。
韓国からはキョンギ・フィルハーモニー管弦楽団が来日する。1997年創設のソウル近郊のスウォン市を本拠とするオーケストラだ。指揮は今年より音楽監督に就任したシーヨン・ソン。女性音楽監督は韓国では初めてだとか。2006年サー・ゲオルク・ショルティ国際指揮者コンクール優勝、07年グスタフ・マーラー指揮者コンクール最上位の経歴を持ち、ボストン交響楽団ではジェームズ・レヴァインのもとでアシスタント・コンダクターを3年間にわたって務めている。欧州でも活躍の場を広げており、注目度は高い。プログラムはルトスワフスキの「小組曲」、ショパンのピアノ協奏曲第1番(独奏:ウィリアム・ヨン)、ブラームスの交響曲第4番。
名古屋フィルは気鋭、川瀬賢太郎の指揮のもと、藤倉大の「トカール・イ・ルチャール」、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番(独奏:田村響)、ラフマニノフの交響曲第2番を披露する。評判の川瀬&名古屋フィルのコンビを東京で聴く貴重なチャンスだ。また、名古屋フィルはホーチミン市響と宮城・名取市で合同演奏会を開催する(10/8)。こちらではベートーヴェンの交響曲第7番などが演奏される予定だ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)
10/5(日)15:00 ホーチミン市交響楽団
10/6(月)19:00 キョンギ・フィルハーモニー管弦楽団
10/7(火)19:00 名古屋フィルハーモニー交響楽団
東京オペラシティ コンサートホール
ホーチミン市響&名古屋フィル合同演奏会
10/8(水)18:30 名取市文化会館
問:日本オーケストラ連盟03-5610-7275
http://www.orchestra.or.jp