﨑谷直人(ヴァイオリン)& 懸田貴嗣(チェロ)

新春に多彩で豪華なバッハ名曲集を!

 2023年2月サントリーホールにて、「ニューイヤー バッハ名曲演奏会」が開催される。同公演は18年にブルーローズ(クローズド公演)で始まり、22年から大ホールでの一般公演に移行。演目は「ブランデンブルク協奏曲」が中心で、今回は3曲が演奏される。当初から中心的存在なのがバロック・チェロの名奏者・懸田貴嗣、今回リーダーを務めるのが神奈川フィルの前コンサートマスターで、ウェールズ弦楽四重奏団ほか多彩な活躍が光る﨑谷直人だ。

 なお前半は、大木麻理のオルガン・ソロおよびトランペットの斎藤秀範とのデュオでお馴染みの名曲が披露される。ちなみに斎藤は、「バッハ・コレギウム・ジャパンの奏者を務めるナチュラルとモダン両楽器の名手」(懸田)だ。

 さて23年の「ブランデンブルク」は、1パート1人のピリオド楽器で演奏された22年とは趣が異なる。

懸田「今回は基本的にモダン楽器で演奏します。編成も大きくし、ヴァイオリンは6人が出演。各パートの人数も曲に応じて増やします」

 﨑谷は初の出演となる。

﨑谷「2年ほど前にチェンバロの西山まりえさん(本公演にも出演)と共演して手応えを得たのが、今回出るきっかけになりました。神奈川フィルの『ブランデンブルク』全曲公演の際にもリーダーを務めていますし、スタイル云々ではなく、個性あるメンバーの自主性を生かした演奏をしたいと思っています」

 二人で集めたメンバーは豪華かつ多彩な顔ぶれ。さらに今回は、「変則編成の第6番、弦楽合奏の第3番、ソロがフィーチャーされた第5番と、3種類楽しめる」(懸田)内容だ。

﨑谷「バッハには色々な可能性があります。編成もまったく違いますし、チェンバロがソロを弾く第5番など、これがなければ協奏曲がここまで発展しなかったかもしれない作品。そうした今との繋がりも面白い」

懸田「1曲1曲のキャラクターが際立った曲集。おもちゃ箱をひっくり返して新しいものを組み合わせるような楽しみがあります」

 楽器の種別も会場の大きさも本質ではないという。

﨑谷「各自の引き出しを持ち寄り、皆が新鮮な感覚でまとまっていければいい。それに音量は音を出す方向性次第。大きなホールでより面白いステレオ効果が生まれる可能性も十分にあります」

懸田「集うメンバーが共有できる地点があるはずだし、感度の高い優秀な奏者が揃っているので、一期一会のエネルギーが生まれると思っています。私も、同時代の人が楽しんだように、フレッシュな気持ちで臨みたいですね」

 この実力者たちによるバッハ名曲集を、ぜひ生で体験したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年12月号より)

ニューイヤー バッハ名曲演奏会 
2023.2/4(土)14:00 サントリーホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186 
https://www.musicachiara.com