飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

円熟の巨匠がおくる唯一無二の“歓喜の歌”

 今年の東京シティ・フィルの「第九」は大注目の公演と言っていい。主たる理由は2つある。1つは同楽団の充実ぶり。2015年から常任指揮者を務める高関健のもとで着実に技量を高め、近年は精緻で覇気に富んだハイクオリティの快演を続けている。昨年12月の高関指揮の「第九」もその好例。引き締まった響きの中で様々な動きが生気を放つ演奏は、極めて新鮮かつ感銘深いものだった。それだけに当然、今年も大きな期待がかかる。

 もう1つは、指揮が桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎であること。ドイツ音楽の泰斗たる彼は、80歳を超えてますます円熟味を増し、持ち前の重厚・壮大さに味わいや行間の妙を加えた、唯一無二の至芸を展開している。長年ポストを有し、強固な信頼関係で結ばれた東京シティ・フィルでは、その巨匠芸を最大限に発揮。21年5月の《ニーベルングの指環》ハイライトや、同年12月と今年6月の「シューマン交響曲全曲演奏シリーズ」における雄大で奥深い表現など、最近も“飯守でしか成し得ない”名演を聴かせている。むろんベートーヴェンの交響曲が以前から造詣の深さを示してきた演目であり、「第九」の曲想が飯守の持ち味に相応しいのも言わずもがな。加えて今回は、ソリストも田崎尚美(ソプラノ)、金子美香(メゾソプラノ)、与儀巧(テノール)、加耒徹(バリトン)と、第一線で活躍する豪華な布陣が揃っている。

 飯守が東京シティ・フィルの「第九」を振るのは7年ぶり。円熟を極める巨匠と充実顕著かつ彼を敬愛する楽団がおくる“今だからこそ聴ける「歓喜」”を、ぜひ生体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年11月号より)

第九特別演奏会 2022 
2022.12/28(水)19:00 東京文化会館
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp