印田千裕(ヴァイオリン) & 印田陽介(チェロ) デュオリサイタル 〜ヴァイオリンとチェロの響き Vol.11〜

希少な実演で堪能する、11年目の深化

左:印田千裕 右:印田陽介

 ヴァイオリン印田千裕&チェロ印田陽介の姉弟デュオ、毎年開催してきたリサイタルが11回目を迎える。両者とも東京藝術大学を卒業、後にそれぞれイギリスとチェコに学び、内外でソリストとして活躍してきた。そのふたりの研鑽と研究の成果を示す高水準なデュオは好評を博している。「この編成に魅了され、無名ながらも色彩豊かな数々の作品を紹介することに意義を感じ、レパートリーを広げてきました」(千裕のコメント、以下同)との言葉通り、今年も考え抜かれた意義深い5曲が並ぶ。

 まず、演奏家が作った作品というテーマによる、「チェロ奏者でもあった古典派のボッケリーニと20世紀ハンガリーのヘルマン、ロマン派時代のヴァイオリン奏者ダンクラ」を。時代も国も異なる3曲で、それぞれに技巧性とメロディを楽しめる佳品ばかりだが、なかでも注目はパウル・ヘルマン。1902年ブダペスト生まれのユダヤ人で、演奏、指導でも活躍したが、44年に捕まり強制収容所に送られて消息不明になった非業の作曲家。その作品に直接触れられる貴重な機会となる。

 ほかには「今こそ必要とされる祈りと希望に満ちた作品」というラトビアのヴァスクスの神秘的な「霊魂の城」、「長大なアドリブ部分が盛り込まれ、結成10年を経た私達の更なる可能性を見つめる機会」という池辺晋一郎の「ストラータⅧ」と、対照的な個性をもつ現代の名作曲家の2作品も注目。この編成、そしてこのデュオの新たな可能性を、王子ホールで体験する。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2022.11/23(水・祝)14:00 王子ホール
問:マリーコンツェルト music@malykoncert.com
https://chihiroinda.com
https://yohsukeinda.com