ヴァシリー・ペトレンコ(指揮) ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

いまこそ胸に響く英国名門オケのオール・ロシア・プロ

 来年5月、ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の日本ツアーが行われる。6都市8公演が予定され、ピアノは辻井伸行。全国各地で大きな話題となるはずだが、一部は早くも10月にチケット発売開始とのことで、争奪戦が予想される。

 ロイヤル・フィルはロンドンを拠点として、「ロイヤル」と冠することを正式に許可された名門楽団で、多数の録音でもよく知られている。2021年からヴァシリー・ペトレンコが音楽監督に就任、このコンビでの初来日となる。ペトレンコは1976年生まれ、日本の楽団の客演を含め各地で広く活躍中のロシア人指揮者。やはり「ロイヤル」を冠したロイヤル・リヴァプール・フィルの首席指揮者を長く務めてきて、彼の熱くも洗練された音楽の魅力を体験した方も多いだろう。辻井とはこれまでも共演を重ねてきたが、20年の彼との日本公演(そのときはリヴァプールの楽団)が中止になり、3年越しで日本での共演が実現する。

 演目はオール・ロシア。辻井とのピアノ協奏曲は得意のチャイコフスキー第1番とラフマニノフ第3番。メインはチャイコフスキー第6番「悲愴」とショスタコーヴィチ第8番、同国で生まれた2つの偉大な傑作交響曲。いずれも深く重い内容をもち、前者は人間の暗い感情と情熱が描かれ、大戦中の大作である後者では“巨大な力”とそれを前にした人間の悲劇が感じられよう。ウクライナ侵攻を批判して母国の楽団のポストを辞任したマエストロが聴かせる母国の名作。心して受け止めたい。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2023.5/22(月)、5/26(金)各日19:00 サントリーホール
5/28(日)14:00 所沢市民文化センター ミューズ アークホール
2022.10/29(土)発売
問:チケットスペース03-3234-9999 
https://www.ints.co.jp
※全国ツアー、プログラムの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。