マチュー・デュフォー フルート・リサイタル

ベルリン・フィル元首席奏者がソリストとしてさらなる飛躍へ

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 1999年からシカゴ交響楽団の首席をつとめ、2015年のシーズンにはベルリン・フィルの同じポストへ移籍を果たす。1972年パリ生まれのマチュー・デュフォーは、2歳年上のエマニュエル・パユ(親しい友人同士)と並ぶ、仏語圏生まれのフルーティストとして“ワールド・スタンダード”なレベルの頂点にある偉才だ。

 リヨン国立音楽院での恩師マクサンス・ラリューから受け継いだ“フレンチ・スクール”の美質を体現する、涼やかで均整のとれた音色。そこに広大なダイナミックレンジとパワフルな機動性が同居を果たすのは、世の東西を代表するスーパー・オーケストラを渡り歩いたキャリアの賜物でもあろう。フレーズの作り方は繊細かつ緻密。しかし音楽が神経質な様相とは無縁なところにラテン的な気質の反映も見てとれる。

 2022年にベルリン・フィルを退団したデュフォーの“今”に、つまりはソリストとして刻む進境に接する機会がやってくる。三都市で開催されるリサイタルの前半はバロック音楽が中心。以前の実演で聴いたエマヌエル・バッハの記憶をたどれば、古楽風のスタイルにも配慮しながら即興的な装飾を大胆に施し、それが単なる添え物の域を超え、曲の世界観を掘り下げる効果まで生んでいたのが印象深い。現在の彼なら、そんな路線をさらに深みを増した笛で極めてくれることだろう。そしてリサイタルの後半は自家薬籠中のフランス音楽。共演はピアノの浦壁信二。愛知室内オーケストラの公演(10/8)で演奏するイベールの協奏曲ともども、圧巻の名技を堪能してみたい。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.10/13(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 
http://www.pacific-concert.co.jp

他公演
10/8(土) 名古屋/三井住友海上しらかわホール(愛知室内オーケストラとの共演)(愛知室内オーケストラ052-211-9895)
10/11(火) 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール(クラシック名古屋052-678-5310)
10/15(土) 大阪/住友生命いずみホール(大阪アーティスト協会050-5510-9645)