待望のマーラー5番と自身編曲「ダンテ・ソナタ」を楽団初披露
マーラーの交響曲第5番と一緒に演奏する作品を選ぶのは、意外と容易ではない。第1番や第4番のように、ロマン派の小品や協奏曲と相性が特別いいわけでもない。第9番と新ウィーン楽派の音楽と組み合わせるといった、黄金パターンだってない。
そこで、バッティストーニは飛び道具を用意した。プログラム前半で、リストのピアノ曲「ダンテを読んで」を自らのオーケストラ編曲で披露するというのだ。この作品は、地獄から天国の高みへとダンテの旅を描く重厚な音楽。マーラーの交響曲第5番での、暗闇からのたうち回った末、浄化されて歓喜に至るという構成と通じるところがある。さすがは才人指揮者。前半と後半とで対称となる、なかなか気が効いたプログラムではないか。
そして、バッティストーニと東京フィルのマーラーといえば、もはや鉄板。エネルギッシュな弾力にあふれた、芯の強い音楽を目一杯に響かせる。明晰な声部処理が期待できるスケルツォ、アダージェットでの身を焦がすようなカンタービレ、そして終楽章でのホールを揺るがす爆発力。マーラーの交響曲のなかでも、もっとも彼の持ち味が発揮されるであろう、待望の第5番だ。
首席指揮者との定期演奏会は、今期はこのプログラムのみ。バッティストーニと東京フィルだけが作り出すことのできる、めくるめく世界を堪能できることは間違いない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2022年9月号より)
第149回 東京オペラシティ定期シリーズ
2022.9/15(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第974回 サントリー定期シリーズ
9/16(金)19:00 サントリーホール
第975回 オーチャード定期演奏会
9/19(月・祝)15:00 Bunkamura オーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp