マルセロ・ゴメス出演の特別企画
1995年にロンドンで初演されるや、チケットは完売につぐ完売。バレエ作品としては異例のブロードウェイ進出、多くの国際的な賞の獲得など、舞踊界に一大センセーションを巻き起こした“男性版”『白鳥の湖』が、この秋ふたたび日本に飛来する。本公演は、アメリカン・バレエ・シアターのマルセロ・ゴメスが出演するスペシャル版。
物語は、バレエの代名詞ともいうべき『白鳥の湖』をもとにしている。愛に満たされず育った王子が、水辺で一羽の白鳥(ザ・スワン)に出会う。ただし、この白鳥は古典とは違い、猛々しく力強い雄のスワン。孤独な王子は彼の瞳に通じ合うものを認めて歓喜するが、この白鳥と瓜二つの男(ザ・ストレンジャー)が舞踏会に現れる。男は、王子をあざ笑うかのように女性たちと踊り、果ては王子が屈折した愛情を抱いている母の女王までも、その魅力の虜にしてしまう…。
演出・振付のマシュー・ボーンは、物語を20世紀の英国王室を思わせる設定に再構築。着替えから公式行事まで常に人目にさらされる王子の日常や、そこから抜け出して訪れるクラブでの乱痴気騒ぎが、馬鹿馬鹿しくもいきいきと描かれる。けれども、作品を成功に導いた最大の要因は、こうした斬新な設定のもと、王子とスワンの関係を深く豊かに描ききったことにある。音楽との対峙の仕方も透逸だ。
ワイルドな白鳥の群舞や舞踏会の踊りも見ものだが、王子の寝室を埋め尽くす白鳥の群れとスワンが死闘を繰り広げる終幕には、心が震えるほどの衝撃と感動を覚えること必至。4年ぶりの日本公演、これを見逃す手はない。
文:新藤弘子
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
9/6(土)〜9/21(日) 東急シアターオーブ
問:キョードー東京 0570-550-799
http://theatre-orb.com/lineup/14_swanlake