堤剛(チェロ)

実力派チェリスト17名で祝福する80歳記念コンサート

 長くチェリストとして第一線で活躍しつつ、サントリーホール館長をはじめとする要職を務める稀有な音楽家、堤剛が今年80歳を迎える。節目の年を祝うべく、8月31日、サントリーホールにて「堤剛 80歳記念コンサート」が開催されることになった。日本を代表する大チェリストのもとに、ベテランから若手まで名だたるチェリストたちが駆けつける。

 大勢のチェリストたちが集まって、いったいなにを演奏するのかといえば、もちろん、チェロのための多種多様な楽曲だ。無伴奏曲からチェロ・アンサンブルまで、さまざまなチェロのための作品がとりそろえられており、この楽器のために残されたレパートリーの豊かさを感じずにはいられない。

 前半に演奏されるのは堤剛がこれまでに大切にしてきた日本の作曲家たちの作品。これらの名曲が次世代の奏者たちによって、受け継がれていく様子を目にすることになる。1987年に堤が世界初演した細川俊夫の無伴奏チェロ曲「線Ⅱ」を演奏するのは、意欲的な活動で注目される新鋭、山澤慧。三善晃の「母と子のための音楽」は鳥羽咲音のチェロと鳥羽泰子のピアノにより演奏される。この曲は三善晃が2002年に国立成育医療センターの院内で流す音楽として書いた優しく愛らしい楽曲。武満徹の「オリオン」は、海野幹雄のチェロと海野春絵のピアノにより演奏される。間宮芳生のチェロと尺八のための「KIO」では、堤自身がチェロを演奏し、尺八の坂田誠山と共演する。

 後半は数々の名手が集いチェロによるアンサンブルがくりひろげられる。ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ」第1番といえば、8本のチェロのための作品。この曲を山崎伸子、植木昭雄、笹沼樹、髙橋麻理子、西谷牧人、濱田遥、堀了介、山本裕康という実力者ぞろいのメンバーで聴ける貴重な機会となる。チェリストとして活躍した作曲家クレンゲルの「賛歌」もチェロ・アンサンブルには欠かせないレパートリー。前述のチェリストたちに堤剛、新倉瞳、上村文乃、上森祥平が加わり、12人のアンサンブルで演奏される。そして、プログラムの最後を飾るのはハイドンのチェロ協奏曲第1番の第1楽章。堤剛が向山佳絵子、長谷川陽子、山本祐ノ介と共演するチェロ尽くしの協奏曲が実現する。

 1942年生まれの堤剛が最初のリサイタルを開いたのは1950年、8歳の頃だったという。桐朋学園で齋藤秀雄に学び、その後、アメリカ・インディアナ大学に留学し、ヤーノシュ・シュタルケルに師事した。1963年にミュンヘン国際コンクールで第2位、ブダペストでのカザルス国際コンクールで第1位を獲得し、国際的なキャリアを築いて、日本の音楽界を牽引してきた。旺盛な演奏活動の一方で、アメリカのイリノイ大学教授、インディアナ大学教授、桐朋学園大学学長他を歴任し、現在もサントリーホール館長、サントリー芸術財団代表理事、日本演奏連盟理事長を務めている。まさに音楽界の巨人というほかない八面六臂の活躍ぶりだ。サントリーホールが格別の祝祭感と敬愛の念で包まれることだろう。
文:飯尾洋一

堤剛80歳記念コンサート
2022.8/31(水)18:45 サントリーホール
問:カジモト・イープラス050-3185-6728
https://www.kajimotomusic.com

山本祐ノ介さんからのメッセージ

植木昭雄さんからのメッセージ

堤先生、この度は80歳の記念コンサート、本当におめでとうございます。ここまで世界のチェロ会を牽引してこられた堤先生は、演奏だけでなく、お人柄や音楽界での立ち振る舞いなど、すべてが私にとってのお手本で私が目指す演奏家像です。私がインディアナ大学に留学時代、朝早く学校へ行き先生のスタジオをのぞくと、もうすでに練習をしていらっしゃって、そして私が夜まで練習をして帰りにまた先生のスタジオをのぞくと、まだ練習していらっしゃるのを見て、今の偉大な堤先生は私の想像を超えた努力の上にあるんだな、、、と実感しました。これからもずっとお元気で、私たちを、そして世界のチェロ会を引っ張って行って頂きたいと思います。

植木昭雄

新倉瞳さんからのメッセージ(St.Moritzの山頂から!)