辻彩奈(ヴァイオリン) & 阪田知樹(ピアノ) デュオ・リサイタル

俊英たちが共鳴し、触発し合う豊潤な音世界

 辻彩奈の進化が目覚ましい。彼女は、2016年のモントリオール国際音楽コンクール優勝後、国内外で顕著な活躍を続ける俊才ヴァイオリニスト。卓越した技術もさることながら、他の若手と一線を画すのは、“自身の声”で奏でる濃密な音楽であり、その演奏は誰をも惹き込む力がある。しかもここ数年、内外の一流音楽家との共演やフランス留学、それに何よりコロナ禍での多くの代役を通して、艶や密度やスケール感を増している。

 この7月、彼女はピアノの阪田知樹とのデュオ・リサイタルを全国で行う。阪田も、16年フランツ・リスト国際コンクール優勝後、国際的に活躍している俊英。ソリストとしての技量はもとより、室内楽でのセンスやバランス感覚が素晴らしく、共演者を引き立てながら絶妙な自己主張を果たす。辻とは20年からコンビを組み、生気に富んだデュオを展開している。それだけに深化著しい辻と彼が触発し合って生み出す“今”の音楽への期待は、いやが上にも膨らむ。

 4種あるプログラムの中で、主軸をなすのはロシア・モダンと独墺名作。前者では、ショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタ op.134が目を引く。この思索的で鮮烈な音楽は、研ぎ澄まされた感性や集中力を要するだけに注目度が高い。後者では、シューベルト、シューマン、クララ・シューマン、ブラームスの関連性が妙味。むろん各曲のロマンティックな表現も楽しみだ。このほか、シュニトケ、ストラヴィンスキー、J.S.バッハ、フランクなど興味深い演目が揃って、どの組み合わせも魅力十分。ここは、若き才能が生み出す清新で芳醇な世界を堪能しよう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.7/7(木)19:00 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)
問:昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)027-221-4321
7/14(木)19:00 トッパンホール 

問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
7/15(金)13:30 神奈川県立音楽堂 
問:神奈川芸術協会045-453-5080
https://www.kajimotomusic.com
※全国ツアー他日程等の詳細は上記ウェブサイトをご確認ください。