Saturday Classics Mariko Senju 千住真理子 珠玉のコンチェルト

節目の年に万感の想いを込めて

(c)Kiyotaka Saito(SCOPE)

 日本を代表するヴァイオリニストの一人として活躍を続ける千住真理子が、還暦を迎えた。「信じられない。そんなに生きただろうか?」と当人ですら述べるほどだから、「12歳で衝撃のデビューを果たした、あの天才少女が?」と感慨を抱くファンも多かろう。そんな節目の年に奏でる「珠玉のコンチェルト」。作曲家の兄・千住明が妹のためにしたためた佳品から、古典の傑作まで、円熟の音色で聴く者を魅了する。

 「2歳3ヵ月でヴァイオリンを手に取り、それからはひたすら走り続けてきたヴァイオリン人生。山も谷も越えて泥だらけになり、時に遭難して苦しみに泣き、時折喜びに笑う一筋の細道…」と千住。2002年にストラディヴァリウス〈デュランティ〉と運命的な出逢いを果たし、「苦しんでよかった。悩んでよかった。この音を出すために、必要な経験だった」と回想している。

 今回のステージは、岩村力指揮の東京フィルハーモニー交響楽団が共演。兄・明の手になる、「ヴァイオリンとストリングオーケストラの為の『四季』」から〈春〉〈夏〉、同じく「ララバイ」、「ヴァイオリン協奏曲」。そして、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」、ヴィヴァルディ「四季」から〈春〉〈夏〉、加えてショーソン「詩曲」と、千住が大切に弾いてきた作品を、パートナーの〈デュランティ〉と共に、心を込めて紡ぐ。

 今回のステージに寄せて、「一期一会の音を聴いてくださる方のため、私の生命の花を咲かせたい」と綴る千住。開演30分前からのプレトークでは、熱い思いの込もった言葉を直接聴衆へ届ける。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2022年6月号より)

2022.6/11(土)14:00 Bunkamura オーチャードホール
問:NHKプロモーション03-3466-7891 
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