大山健太郎(アイリスオーヤマ株式会社 代表取締役会長/仙台フィルハーモニー管弦楽団 副理事長)

「東北の音楽文化を盛り上げたい」アイリスオーヤマ会長の願い

 仙台フィルハーモニー管弦楽団と現代屈指のヴァイオリニストとの共演が実現する。6月10日、東京オペラシティ コンサートホールでの「アイリスオーヤマクラシックスペシャル2022 ギドン・クレーメル×仙台フィル」だ。「東京公演を当社の主催で毎年続ける」と仙台フィル副理事長でアイリスオーヤマ会長の大山健太郎氏は意気込む。仙台市を代表する企業経営者にして大のクラシック音楽ファンの大山氏は、同楽団への支援活動に精力的に取り組んでいる。

 「私はクレーメルさんの大ファン。3年に一度開催される5〜6月の仙台国際音楽コンクールで彼は審査員を務める。せっかく来日するのに、審査員だけで帰られるのはもったいない。そこで仙台フィルとの共演をお願いしたら快諾してくれた」

 東京公演では高関健の指揮でアルヴォ・ペルトの「フラトレス〜独奏ヴァイオリン、弦楽と打楽器のための」のほか、クレーメルが絶大な信頼を寄せるリトアニアのチェリスト、ギードレ・ディルヴァナウスカイテを加えてフィリップ・グラスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」も演奏する。

 大山氏は1996年から仙台フィルの理事を務めている。「19歳で家業を継承したが、経営者はストレスが多い。チャイコフスキーやベートーヴェンを聴いて元気を取り戻すのが日課になった」。1989年、創業地の東大阪市から仙台市に本社を移転。「地元企業ということでお声掛けがあり、仙台フィルの支援を始めた。1992年のアイリスオーヤマ・コンサート以来、地元公演や年末の第九コンサートの協賛のほか、当社の工場での野外コンサートも開いてきた」。2023年に設立50周年を迎える仙台フィルの歴史の大半に関わってきた。

「2006年から18年まで常任指揮者を務めたパスカル・ヴェロさんの時代にフランス音楽を取り上げる機会も増え、響きの色彩感が豊かになり、演奏レベルが上がった。そこで東京のお客さまにもぜひ聴いてもらいたいと考え、19年から東京公演を主催している」

 20年はコロナ禍で中断したが、今年で3回目。今回、東京と仙台の2ヵ所セットで開催を予定していたが、3月16日に発生した地震の影響により東京のみの公演となる。クレーメルらとの共演に加え、人気の高いシベリウスの「交響曲第2番」でも同楽団の演奏水準の高さが証明されるだろう。

「どんなオーケストラと比べても遜色のない演奏水準になっている。あとは地元に拠点となる本格的な音楽ホールがほしい」

 そんな希望も実現する運びだ。仙台市は青葉山交流広場に2000席規模の新たなコンサートホールを建造すると決定した。

 「東日本大震災後、『音楽の力』をテーマに楽団員が被災地を回って演奏してきた。生の楽器の音に触れる大切さがそのとき分かった。『楽都仙台』の新たなホールで多くの人々に生演奏を体験してもらい、東北の音楽文化を盛り上げたい。マーラーやブルックナーの交響曲など大規模な作品も取り上げていきたい」

 東京公演は仙台フィルのさらなる飛躍へのステップになる。
取材・文:池上輝彦
(ぶらあぼ2022年6月号より)

アイリスオーヤマクラシックスペシャル2022
伝説は進化する ギドン・クレーメル×仙台フィル 最高峰のヴィルトゥオーソとの共演
2022.6/10(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:仙台フィルハーモニー管弦楽団022-225-3934
https://www.sendaiphil.jp