勅使川原三郎 × オーレリー・デュポン 『睡眠 -Sleep-』

デュポンのコンテンポラリー、初上陸!

勅使川原三郎(C)Sakae Oguma

勅使川原三郎(C)Sakae Oguma

 世界最高峰のアーティストの共演である。強烈なオリジナリティと揺るぎない世界観の舞台を作り出す演出・振付・ダンサーの勅使川原三郎。その実力は世界でも高く評価され、日本で唯一パリ・オペラ座バレエ団から作品依頼を受けるほど。昨年は同団へ2作目となる『闇は黒い馬を隠す』も発表した。そして同作に出演したエトワールのオーレリー・デュポンが出演するのも今回の話題である。
 テーマは「睡眠」。
「人は誰しも眠るので、良く知っていると思いがちです」と勅使川原は言う。「しかし“永眠”などと死にもたとえられるほど、睡眠中は自覚できない世界に入り込んでいるわけです。覚醒と睡眠が入れ替わる、どこまでも不可思議なその瞬間を拡大して、“生のもう一つの位相”を探っていきます」
 あくまでも扱うのは「睡眠」そのものであり、「夢」ではないのだ。今回は舞台美術にも「意識と無意識が交差する空間を実感できるような透明な装置」を用いる予定。「睡眠という非現実な感覚も、じつは常に現実的な感覚の内にある空間として、時間のブレーキから解放された物質として視覚化したい」。
 さてデュポンはすでに、昨年の『闇は〜』出演にあたり、勅使川原からみっちりとワークショップを受けている。
「自分の身体を探求し、再発見し、完全な自由を味わう、本当に素晴らしい体験でした! サブローの魅力は、彼独自のアプローチの仕方と振付の現代性で、常に新しい挑戦をしていること。それが、彼があんなに若々しいままでいられる秘訣なのね!(笑)」
 勅使川原もデュポンには驚かされたという。
「彼女は決して簡単ではない私の要求に、常に初心者のような謙虚さで向かう姿勢に、作品への強い献身的な態度を感じました。それは“ダンスへの献身”といえる澄んだものでした」
 キャリアや名声に驕ることなく、ひたむきにダンスに立ち向かう姿が、ジャンルを越えて観客の胸を打つのだろう。
「私は日本を第2の芸術の故郷だと思っています。皆さんがこれまでご覧になってきたものとはずいぶん異なる作品をお見せできるのが、とても嬉しいです。大好きなサブローさんの作品ですから」
 そのデュポンとの共演が楽しみなダンサーが佐東利穂子である。勅使川原作品に欠かせない存在で、時に鋭利に、時にたゆたうように変幻自在に踊る。デュポンをして「素晴らしい情熱を持って動きの一つひとつを探求し続けている稀有なアーティストです。私は彼女をとても尊敬しています」と言わしめるほど。両者の出会いも見どころのひとつである。
「作品の中で最も大切なことは“ダンスに何が可能か”という視点です」と勅使川原は言う。「身体の存在や動きによって、何を生み出すことができるのか、いかに新鮮な時間を観客と共有できるか。微細な連続性の中に生命が生き、現実への見方が開かれるようなダンスをお見せしたいと思います」
 決まった動きを再現するのではなく、常に発見し続け、生まれ続けるダンス。最高のダンサーと共に、ここでしか見られぬ試みを楽しみに待ちたい。
取材・文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)

オーレリー・デュポン(C)Agathe Poupeney

オーレリー・デュポン(C)Agathe Poupeney

8/14(木)〜 8/17(日)東京芸術劇場プレイハウス 
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp
8/21(木)19:00 愛知県芸術劇場
問:愛知芸術文化センター 052-972-0430 
8/23(土)18:00 兵庫県立芸術文化センター 
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255

  • La Valseの最新記事もチェック

    • プッチーニ《蝶々夫人》 | 岸純信のオペラ名作早わかり 〜新時代のオペラ作品ガイド 第3回 
      on 2019/08/18 at 22:30

      text:岸 純信(オペラ研究家) 【あらすじ】 明治期の長崎を舞台に、大和撫子の蝶々さんが米国海軍士官のピンカートンと結ばれるが、帰国した夫はアメリカ人と結婚。彼を待ち続けた蝶々さんは、軍艦が戻ってきたその日、子どもも手放すよう言われて「抗議の死」を選ぶという悲劇の物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 《蝶々夫人 Madama Butterfly》は、日本人に「日本の美学を改 [&#8230 […]