デクスター・フレッチャー(映画監督) 映画『サンシャイン♪歌声が響く街』

80年代の名曲で楽しむミュージカル映画

デクスター・フレッチャー

デクスター・フレッチャー

 英国スコットランドの沿岸沿いの街、リースを舞台にした映画が誕生した。『サンシャイン♪歌声が響く街』の原作は、2007年に初演され、英国で大ヒットしたミュージカル。その映画化に、本作が監督2作目となるデクスター・フレッチャーが挑んだ。映画好きの方ならば『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』への出演など、俳優としておなじみだろう。
「監督としてのオファーを受けたとき、これはまたとないチャンスだと感じた。というのもオペラの演出家である妻の仕事を見ているうちに、いつか音楽を使ってストーリーを紡ぐことにトライしたいと思っていたんだ」
 物語の中心となるのは、結婚25周年を迎えるロブとジーンの夫婦だ。そこへ息子のデイヴィーがアフガニスタンでの兵役を終えて帰還する。幸せに包まれる一家だったが、銀婚式のパーティでロブに24歳になる隠し子がいたことが発覚。一方、デイヴィー、さらに妹のリズもそれぞれの恋、将来について悩み始めていた…。突如訪れた家族の危機をきっかけに人生を見つめ直し、絆を深めていく一家の物語を彩るのは、スコットランドの国民的バンド、プロクレイマーズの名曲の数々だ。
「今回の映画作りを通して彼らの音楽がいかに情熱的で、人の内面をリアルに描いているかを知ることができたし、僕自身、プロクレイマーズの音楽が大好きになった。この作品に使われている楽曲はいずれも既成曲で、それゆえに歌の歌詞とシーンは必ずしも一致していない。例えばスコットランド人のアイデンティティを歌った曲をラブソングとして使っていたりするけれど、そのほうが登場人物たちの心の声がより伝わることがある。結果、物語が多面的になるんだ。何より物語と音楽をパーフェクトに融合させていく作業は実に楽しかった」
 そう語るフレッチャー監督は、1976年にジョディ・フォスター主演のミュージカル映画『ダウンタウン物語』に出演。「子どもの頃からミュージカルに深い愛情を抱いていた」というだけに、500人のエキストラが参加したクライマックスの大ナンバーなど、ミュージカルへの愛に溢れた演出が光る。
「ミュージカルシーンを演出する上で大事なのは、どんなに素晴らしい曲であってもそのままでは用いないこと。音楽は人の魂に直接響くからこそ、観客は登場人物の気持ちをすぐに理解してくれる。今回のような普通の人々のドラマであれば、なおさらそうじゃないかな。隠し子がいると知ったジーンのソロは、たった4行しか歌っていないけれど、彼女の心情は十分に伝わると思う。歌を通して人間誰しもが被っているマスクが外れて、心の奥底が明らかになるんだ」
 それこそが音楽の力であり、ミュージカルのマジックなのだろう。ジーン役のジェーン・ホロックスをはじめ、英国の実力派俳優たちが紡ぐドラマを見終えた後には、自分の家族、何気ない日常がきっと愛おしくなるはずだ。
取材・文:宇田夏苗
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)

『サンシャイン♪歌声が響く街』より(C)DNA Films

『サンシャイン♪歌声が響く街』より(C)DNA Films

8/1(金) よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほ全国順次ロードショー
問:ギャガ 050-5810-1357 
http://sunshine.gaga.ne.jp

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