【CD】松平頼則・松平頼曉 ピアノ作品集/井上郷子

 音楽をシステマティックに思考し発展させてきた松平親子のピアノ作品集。父・頼則のセクションが日本の旋法と音列技法のハイブリッド化(「ピアノのための16の小曲」)でスタートするのに対し、子・頼曉作品は調性音楽の異化(「井上郷子のための名簿」)なのが対照的だ。また、ガラス細工のように繊細な頼則作品に対し、頼曉作品はよりダイナミックな音響世界を志向している。とはいえ、揃って90歳を超え現役で作曲した/している2人の軌跡と創作には、切っても切れない父子の縁も感じられる。最後の曲は、50歳で亡くなった頼曉の娘に向けられており、コラール風に清廉に閉じる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年5月号より)

【information】
CD『松平頼則・松平頼曉 ピアノ作品集/井上郷子』

松平頼則:ピアノのための16の小曲—日本民謡のスタイルによる子供のためのやさしいピアノ曲、「呂旋法によるピアノのための3つの即興曲」より〈Ré 壱越〉、「律旋法によるピアノのための3つの即興曲」より〈la 黄鐘〉、短歌による二つの前奏曲/松平頼曉:井上郷子のための名簿、ピアノのための史跡、ピアノのための3章

井上郷子(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-133 ¥3080(税込)