《インバル、マーラー10番を語る》が開催

 今月20、21日に《都響スペシャル/マーラー交響曲第10番》を指揮するエリアフ・インバルが16日、《インバル、マーラー10番を語る》と題した特別レクチャーを行った。会場となった東京芸術劇場シンフォニースペースには熱心なファンやプレスが詰めかけた。

(C)堀田力丸
(C)堀田力丸 提供:東京都交響楽団

 マーラーの未完の大曲、交響曲第10番は、インバル×都響のマーラー・ツィクルスの“真の完結篇”として、インバル自身が「ツィクルスの締めくくりとしてぜひ演奏したい」と当初から強く望んでいたという。未完の作品ゆえ、第1楽章アダージョのみが演奏されることの多いこの作品をインバルは「最もマーラーらしく、最上の補完版」と語るデリック・クック版で演奏する。

 インバルはかつて、BBC交響楽団で同作品を演奏した際、リハーサルで校訂者クックと意見を交わした経験をもつ。
「1969年にBBC響を指揮したとき、クックも立ち会いました。その際、話し合いのなかで生まれたいくつかの手直しを加え、第2稿が完成しました。今回使用するのはこの版です。第1楽章以外は、マーラーの手によるオーケストレーションこそできていませんでしたが、すべての音が書かれていますので、クックはそれに基づき、忠実にマーラーの音楽を完成させました。クック以外にも補筆版がありますが、それらはもはやマーラーの音楽ではなく補筆した人の“自分の作曲”になってしまっている。クックは遺された資料に最も忠実で最もマーラーらしい補筆をしました。マーラーが頭に描いた作品の本当の姿は知りえませんが、彼はとても素晴らしい仕事をしたと思います」

 レクチャーは、インバル自身が指揮・録音したCDを聴きながら、交響曲第1番から順に進められ、時折、曲にあわせ指揮しながらマーラーの音楽にこめた想いを解説、第10番のエンディングで奏でられる弦のグリッサンドの部分では「最後の叫びです。また別れです、人生に、愛に。素晴らしいエンディングですね」

 常に生と死を意識していたマーラーを「第9番ですでに現世への別れを告げているので、第10番では死後の世界から現世を見ています」とし、最後に「第10番はこの世界にとって最も大きなプレゼントです。マーラーは決して死んでいないのです。われわれの心のなかに永遠に生き続けるのです。マーラーにお礼を言いたいです。われわれに第10番を遺してくれてありがとう」と締めくくった。

 このレクチャーの模様は、都響の新しい試みとしてtwitterで中継された。専用アカウント( https://twitter.com/Inbal_mahler10 )で概略を読むことができる。

 また、20、21日演奏会場となるサントリーホールのロビーでは、インバル・都響のマーラー演奏を振り返る展示も行われ、インバル初来日時の写真や1990年代に行われたマーラーチクルスのポスターなどが展示される予定だ。

(C)堀田力丸
(C)堀田力丸 提供:東京都交響楽団

◆コンサート◆
《都響スペシャル/マーラー交響曲第10番》
日時:7月20日(日)、21日(月・祝) 各14:00開演
会場:サントリーホール(六本木一丁目/溜池山王)
指揮:エリアフ・インバル(都響桂冠指揮者)、管弦楽:東京都交響楽団
曲目:マーラー作曲 交響曲第10番 嬰ヘ長調(クック補完版)
料金:S席7,500円  A席6,500円  B席5,500円  C席 完売  P席 完売

東京都交響楽団 http://www.tmso.or.jp