豊かな詩情。大人のノスタルジー。ヴァイオリンを聴く喜び。元東京フィル・コンサートマスターの青木高志と、アメリカで活躍するピアニスト弘中美枝子。高校時代に共演機会のあった彼らが30数年ぶりに再会したことから録音が実現し、ふたりの経験と年輪が美しい融和をみせて、すてきなアルバムが完成した。繊細でメロウ、でも力強さもある青木の美音が郷愁を誘う。弘中の無理なく空間を包み込む響きも温かい。選曲も彼らの特長に合ったもので、歌曲の編曲やブラームスの表現は心の襞に触れる。図らずも不安の重なる時期のリリース、部屋の空気が和らぐ大切な一枚となるはず。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年4月号より)
【information】
CD『Poésie〜詩を奏でる/青木高志&弘中美枝子』
スーク(コチアン編):愛の歌/マスネ:タイスの瞑想曲/ショーソン:詩曲/ブラームス:旋律のように(ハイフェッツ編)、ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」/R.シュトラウス:夜、明日!/ドヴォルザーク(クライスラー編):我が母の教えたまいし歌
青木高志(ヴァイオリン)
弘中美枝子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7962 ¥2750(税込)