山根一仁(ヴァイオリン) J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ全曲演奏会 I

逸材の進化を示す渾身のバッハ無伴奏

(c)宮森庸輔

 新世代屈指の俊才ヴァイオリニスト・山根一仁が、いよいよJ.S.バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ全曲に挑む。山根は2010年の日本音楽コンクールを中学3年生で制した超逸材。以後、バーミンガム市響やN響をはじめ内外の著名楽団と多数共演するなど、第一線で活躍を続けている。そして彼の成長を強く後押ししているのがトッパンホールだ。真の実力者のみを起用し、“弦のトッパン”とも称される同ホールは、早期から山根に注目。14年〜17年の〈エスポワール シリーズ〉ほか数多の主催公演で主役を演じさせてきた。つまり同ホールで“聖典”に挑む今回は、その1つの(現段階の)集大成というべき公演なのだ。

 山根は迫真的な“自分の音楽”を持っている。旺盛な表現力と高い集中力と鋭い感性で奏される音楽には“力”があり、それは繊細さやしなやかさの中にも潜んでいる。この特長はむろんバッハの無伴奏に相応しい。さらには15年秋からミュンヘンに留学して著名なクリストフ・ポッペンに師事したのが大きい。14年の〈エスポワール〉初回でバッハの無伴奏ソナタ第1番を凄絶に奏でた彼は、17年の最終回で第2番をより自由に表現した。後者はバッハを熟知するポッペンから最初に学んだ曲だという。かくして山根の音楽には自然さや柔軟性も加わってきた。そして5年後の今いかなるバッハを聴かせてくれるのか? 

 今回はまずパルティータ3曲。舞曲を連ねた諸作はソナタより動的で自由度が高く、山根にも合っている。本公演は、俊英の進化を知ると同時にヴァイオリン界の今後を感知し得る大注目の一夜だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年2月号より)

2022.3/2(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com