近藤嘉宏(ピアノ)& 外山啓介(ピアノ)

男性ピアニスト2人が贈る彩り豊かな世界

 ソリストとして人気と実力を誇る近藤嘉宏と外山啓介が、ソロ曲を交えながら2台ピアノの演奏で初共演を果たすことになった。

近藤「2台ピアノの演奏は何度か行っていますが、今回のようにまとまった形は初めて。決して付け焼刃的ではなく主従関係でもなく、男性2人でがっちり組み、心血を注いで演奏したいと思い、外山さんに声をかけました」

外山「すごく光栄です。大先輩と一緒に演奏できるのは大いなる勉強の場となりますから」

 プログラムはドビュッシー(デュティユー編)のベルガマスク組曲より「月の光」で幕開けし、各自のソロに続きラフマニノフの組曲第2番より「タランテラ」で前半を閉じる。後半は、メインのブラームスの交響曲第4番(作曲者自身の編曲による2台ピアノ版)が登場する。

近藤「ソロには絵画的な要素を含む作品を選びました。プログラム全体は彩り豊かな構成となっていますが、バランスが取れていると思います」

外山「リストのバラード第2番は高校時代、演奏に行き詰まっていたときにホルヘ・ボレットの演奏を聴き感銘を受け、この曲を弾きたいからまだピアノはやめられないと思った特別な曲です」

 ブラームスの交響曲第4番については両者が「これぞブラームス」と言い、熱く語る。

近藤「僕は数年前に体調を崩してピアノが弾けない時期があったのですが、そのころにブラームスの作品が内包する諦観のような表現が理解できるようになったのです。そこで今回はこの曲を外山さんと地に足をつけたかたちで、完成度の高い演奏を目指したいと思っています」

外山「ブラームスは崇高すぎて簡単に入っていけない分野だと考えています。だからこそ、今回は演奏を通じて何かがつかめると期待しているのです。僕も今年はあまりいい年ではなく、壁にぶつかってしまった。それを払拭する意味でも、全力で取り組みます」

 音楽家は幼いころから演奏ひと筋。壁にぶつかり、それを乗り越え、新たなる視点を見つけてひたすら前に進む。2人ともいろんな人生経験を経て、それが肉厚な演奏を生む原動力となる。今回の初共演は本当に楽しみだと語る2人の愉悦の表情が印象的だ。

近藤「ブラームスはオーケストラの演奏とは異なり、ピアノの一つひとつの音が明瞭に聴こえ、響きやニュアンスがとても豊かです。低音の扱いも見事。きっと魅了されますよ」

外山「いまひとつの壁を越え、自由で本来の自分を表現する演奏ができるようになりました。それを待望の2台ピアノの演奏で発揮したい」
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2022年1月号より)

Hakuju サロン・コンサート vol.11 近藤嘉宏 & 外山啓介
初共演の2人が魅せる 甘美な調べ
2022.2/8(火)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 
https://hakujuhall.jp