佐渡裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

次期音楽監督がダイナミックに描き上げる傑作2篇

 音楽の本場ウィーンで活躍する佐渡裕は、国内でも絶大な支持を誇っている。これまでは関西圏との結びつきが強かった印象だが、2022年4月には新日本フィルのミュージック・アドヴァイザー、翌年4月からは同楽団音楽監督への就任が発表され、いよいよ首都圏のオケとの本格的な協業が始まる。1月の「すみだクラシックへの扉」は、両者の今後を占う重要な前哨戦となりそうだ。

 この機会に佐渡が選んだのが「シェエラザード」だ。オーケストレーションの大家として知られたリムスキー=コルサコフの代表作で、管弦楽の醍醐味を味わえる。女性嫌いの王の怒りを鎮めるために、毎晩面白い物語を語って聞かせたという『アラビアンナイト』のシェエラザード妃。独奏ヴァイオリンが描き出すその可憐な主題が、楽章ごとに異なるエピソード、情景をつないでいく。実は佐渡は2017年、ウィーン交響楽団の本番数時間前にこの曲の代役を頼まれ、見事な名演を聴かせたという。この曲の情景喚起力は、なるほど佐渡のダイナミックな芸風と相性がよさそうだ。

 前半にはニュウニュウが登場し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を披露。09年にサントリーホールにデビューした時にはまだ12歳。当時からテクニックはもちろんのこと、打鍵にはしっかりとした圧があったが、かつてのあどけない少年もいまやシャープな顔立ちの青年に。この年代は心身ともに急激に変化していく時期でもある。旧知の仲の佐渡のサポートのもと、どんな「皇帝」ぶりを発揮してくれるのか、こちらも興味は尽きない。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年12月号より)

*出演を予定していたニュウニュウ(ピアノ)は、新型コロナウイルス感染症オミクロン株に対する政府の水際対策強化のため、来日が不可能となりました。代わって、反田恭平が出演いたします。

すみだクラシックへの扉 #04
2022.1/21(金)、1/22(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp