古楽の精鋭が集い奏でるバッハの創意溢れる名曲全集
来年1月、サントリーホールでバッハの「ブランデンブルク協奏曲」の全曲コンサートが開催される。バロックの管弦楽曲のなかでも屈指の人気曲なのに、演奏時間が長いために滅多に全曲演奏が行われない。それをヴァイオリンの平崎真弓を中心に、チェンバロの西山まりえやフラウト・トラヴェルソの菅きよみ、チェロの懸田貴嗣ら古楽の実力者が一堂に会して全6曲を演奏しようというのだ。
アンサンブルのリーダーでソロ・ヴァイオリンを担当する平崎は、東京藝術大学とニュルンベルク音楽大学でモダン・ヴァイオリンを、ミュンヘン音楽大学とルツェルン音楽大学でバロック・ヴァイオリンを学び、モダンでライプツィヒのバッハ国際コンクール第2位、バロックでブルージュ国際古楽コンクール第3位となってドイツの名門古楽オーケストラ、コンチェルト・ケルンのコンサートマスターに抜擢。以来、欧州の最前線で活躍している。「今回のメンバーの多くが私と同年代。以前に共演させていただいた方々も多く、皆さん素晴らしい音楽家たちばかり。日本で再会して共演できるのが本当に嬉しい」と語る。
「この協奏曲集の名称は、ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルードヴィッヒに献呈されたことに由来しますが、バッハが自筆の総譜に記した献辞の日付が1721年。つまり2021年はそれから300年目にあたります。その記念の翌年に日本の皆さまに全曲演奏をお聴かせできることはとても嬉しいです。私と『ブランデンブルク』との最初の出会いは2001年のサイトウ・キネン・オーケストラのコンサートでした。今井信子先生や古楽の名匠ワルター・ファン・ハウヴェ氏から教わったことは、今でもこの音楽作りの言語の一部です」
平崎にとってこの協奏曲集の魅力はどんなところにあるのだろうか。
「洗練されていて手が込んでいるということでしょうか。楽器の組み合わせも、音楽的な内容も実に多彩。バッハら18世紀中頃のドイツの音楽家たちはイタリアやフランスの音楽のスタイルから受けた影響を取り入れ、それを自分たちの音楽様式としました。この協奏曲も本当に様々な要素やイディオムが混ざっていて、まさに音楽の万華鏡。コンチェルト・ケルンとは2014年にCD録音を行い、その後欧州各地で全曲演奏会をしました。一晩で全曲となるとさすがに集中力、体力面ともに大変ですが、その分とてもやりがいがありますし、お客様にも充実した体験をしていただけると思います。
それから、バロック時代は器楽曲でも音楽を語るように演奏しました。様々な言語や方言があるように、演奏家も自分が学んだ場所や普段の活動で音楽の語り方が異なります。それは今回のアンサンブルにも言えることだと思います。皆さんどんなふうに語るのか、どんな演奏になるのか、私自身とても楽しみにしています」
バッハの名作協奏曲全曲を古楽の名手たちのライブで聴くまたとない機会であるとともに、新たな年の幕開けにふさわしいコンサートとなることだろう。
取材・文:那須田務
(ぶらあぼ2021年12月号より)
*出演を予定していたヴァイオリンの平崎真弓、リコーダーの伊藤麻子は、新型コロナウイルス感染症オミクロン株に対する政府の水際対策強化のため、出演を見合わせることとなりました。(12/17主催者発表)
この公演には新たにゲストとして豊嶋泰嗣氏(ヴァイオリン・ヴィオラ)をお迎えし、リコーダーは代わって井上玲が出演いたします。
ニューイヤーコンサート J.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲」全曲演奏会
2022.1/19(水)18:30 サントリーホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186
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