第6回 オペラ歌手紅白対抗歌合戦 〜声魂真剣勝負〜

豪華歌手陣が勢揃い! 年末恒例の心躍る真剣バトル

 今年も、「オペラ歌手紅白対抗歌合戦 〜声魂真剣勝負〜」が開催される。今年で6回目のこの歌合戦は、今が旬の歌手たちが男女に分かれて競い合う真剣バトルである。指揮者まで男女(齋藤友香理とロッセン・ゲルゴフ)に分かれる徹底ぶり。管弦楽は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。

 白組では、まず、笛田博昭、宮里直樹ら、今まさに脂が乗っているテノールが特に楽しみである。パヴァロッティの歌う〈誰も寝てはならぬ〉がオペラの道に進むきっかけとなった笛田は、まさにそのアリアを歌う。近年、ベルカント・オペラでの活躍が顕著な宮里は《愛の妙薬》の〈人知れぬ涙〉で美声を披露。紅組では、今年の夏に《ルル》のタイトル・ロールを演じ絶賛された森谷真理に注目である。森谷は《イドメネオ》からエレットラの〈オレステとアイアスの苦しみを〉を歌う。また、砂川涼子と佐藤美枝子という2人のプリマドンナの登場も嬉しい。砂川は《ルサルカ》の〈月に寄せる歌〉、佐藤は《椿姫》の〈ああ、そは彼の人か〜花から花へ〉を。2人の歌声は聴き手の心を揺さぶることだろう。藤原歌劇団だけでなく、新国立劇場での活躍も著しいバリトンの須藤慎吾は《オテッロ》から〈イアーゴの信条〉をとりあげる。

 二重唱の対決も充実。紅組では、幸田浩子と林美智子による《ノルマ》からのノルマとアダルジーザの二重唱がこの歌合戦の最大の聴きどころとなるに違いない。幸田はCDでも《ノルマ》の〈清らかな女神〉を録音。林は幸田と息の合った歌唱を聴かせてくれるだろう。白組では、小原啓楼と上江隼人の《真珠採り》の〈聖なる神殿の奥深く〉は、二期会の小原と藤原歌劇団の上江の二重唱ということで興味津々。

 そのほか、アメリカを中心に活躍し、2019年のセイジ・オザワ 松本フェスティバルで《エフゲニー・オネーギン》のタイトル・ロールに抜擢された大西宇宙も聴き逃せない。《仮面舞踏会》からレナートの〈お前こそ心を汚す者〉を歌う。バロックのジャンルでも活躍するカウンターテナー彌勒忠史の《フィガロの結婚》よりケルビーノの〈恋とはどんなものかしら〉は貴重。ソプラノの木下美穂子、小林厚子、メゾソプラノの鳥木弥生、金子美香、テノールの西村悟らの人気歌手の登場も楽しみ。

 また、齋藤の指揮にも注目したい。ドレスデンで学び、バイエルン州立歌劇場の《パルジファル》ではキリル・ペトレンコのアシスタントも務めた実力派。彼女のオペラ・レパートリーでの指揮を早く聴きたいものだ。

 今年は、東日本大震災10年目の特別企画としてTSUNAMI ヴァイオリンの演奏もある。弦楽器製作者の中澤宗幸が東日本大震災の流木を使って作ったヴァイオリン。それを妻である中澤きみ子が弾き、俳優の高橋克典が被災地復興の願いを込めて詩を朗読する。

 最後は、聴衆によって勝敗が決まる。どれだけ聴き手の心にアピールすることができたかが問われる、歌手にとってはまさに真剣勝負な歌合戦なのである。
文:山田治生
(ぶらあぼ2021年12月号より)

2021.12/3(金)18:30 サントリーホール
問:ヴォートル・チケットセンター03-5355-1280
http://operaconcert.net
※出演者やプログラムの詳細は、上記ウェブサイトでご確認ください。