【SACD】ショスタコーヴィチ:交響曲 第8番/井上道義&新日本フィル

 いま最も痛快なショスタコーヴィチを聴かせる井上道義が、交響曲第8番の名演を生み出した。新日本フィルならではのしなやかで清廉な音色は保ちながら、容赦ない厳しい表現も実現。悠揚迫らぬテンポでひたひたと歩みを進めることで(特に前半2楽章)、堂々たる威容を構築すると同時に、内面の恐怖感まで引き出して余すところがない。全体にトランペットが柔らかめだが、響きが先鋭的にならないための配慮だろう。「組曲」の小粋な明るさや哀愁も絶品で、この楽しさと8番のシリアスさの対比も際立つ。CD収録時間めいっぱいの約82分、“ミチヨシのショスタコ”を堪能する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年11月号より)

【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲 第8番/井上道義&新日本フィル』

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番、「ステージ・オーケストラのための組曲(ジャズ組曲第2番)」より〈行進曲〉〈リリック・ワルツ〉〈小さなポルカ〉〈ワルツ第2番〉〈ダンス第1番〉

井上道義(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団

収録:2021年7月、サントリーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00761 ¥3520(税込)