アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

鮮烈なロシアンサウンドがホールを満たす日、再び!

 昨年からの諸々の制限下、日本フィルの顔である現首席指揮者のピエタリ・インキネンと前任者のアレクサンドル・ラザレフ(現・桂冠指揮者兼芸術顧問)の来日は、残念ながらなかなか叶わなかったが、ラザレフは今年4月に久々の来日が実現。1演目2日間、大変な熱気と高精度な音響に満たされた「ペトルーシュカ」等のロシア・プロを聴かせて、“やはりラザレフがいてこその日本フィル!”と実感させてくれた。

 そしてこの10月、ラザレフとのロシア・プロが改めて実現する。まず、リムスキー=コルサコフを2曲。色彩豊かな「金鶏」組曲と、15分ほどの佳品であるピアノ協奏曲が取り上げられる。ソリストは思慮深い美音とキレのある名技を併せもつ福間洸太朗。ラザレフと福間の共演で、知られざる協奏曲の再評価にもつながりそうだ。「金鶏」の鮮烈なサウンドも楽しみ。

 そして後半は待望のショスタコーヴィチ、それも交響曲第10番。スターリン死去直後に発表され、作曲者自身の名前による音名象徴「DSCH」が頻出する、代表的傑作にして問題作である。深遠かつ巨大な第1楽章、暴虐の嵐が一瞬のうちに吹き荒れる第2楽章、作曲者自身と秘めた思い人の名が交錯する第3楽章、思索的な序奏から不思議な狂騒に至る第4楽章、いずれも聴きどころ。現代最高のショスタコーヴィチ指揮者の一人ラザレフと、彼が鍛えあげた日本フィルによる「10番」となれば、強靭な名演は必至で、楽しみという以上の思いがこみ上げる。困難な時期が続くなか、強烈な刺激が約束された、必聴の公演だ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年10月号より)

第734回 東京定期演奏会〈秋季〉
2021.10/22(金)19:00、10/23(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp