作曲家・ピアニストの野平一郎が、9月1日付で東京文化会館の音楽監督に就任することが発表された。同ホールでは、2004年から12年まで大友直人が初代音楽監督を、2012年から21年3月まで、小林研一郎が9年間にわたり2代目音楽監督を務めており、野平が3代目となる。作曲・ピアノ・指揮・プロデュース・教育と幅広く活動してきた野平が、東京の中心的な音楽・舞台芸術の発信拠点ともいうべき東京文化会館で、どのようなプロジェクトを展開していくのか注目される。
野平は1953年生まれ。東京藝術大学、同大学院修士課程作曲科を修了後、フランス政府給費留学生として、パリ国立高等音楽院で作曲とピアノ伴奏法を学んだ。ピアニストとしては、バーゼル放送響、アンサンブル・アンテルコンテンポランタン、ロンドン・シンフォニエッタなど国内外のオーケストラにソリストとして出演するほか、室内楽やソロでも活躍。古典から現代まで幅広いレパートリーをもち、リゲティ、武満徹など日本初演を手がけた作品も多い。作曲家としては、フランス文化省、IRCAMなどからの委嘱作品を含む約140曲を発表。2005年には、オペラ《マドルガーダ》がドイツのシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭で初演されている。
2012年、紫綬褒章を受章。また、2018年には日本芸術院賞を受賞している。現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学作曲科教授。2022年6月に開催される仙台国際音楽コンクールではピアノ部門審査委員長を務める予定。
野平一郎氏メッセージ ~音楽監督就任にあたって~
東京文化会館は、私にとって音楽を志したときから幾度となく通い、いろいろな音楽を聴いてきたとても親近感のある場所であり、ここで得たものが私の成長に欠かせない肥やしになっています。東京文化会館は音楽家を育んできただけでなく、クラシック音楽の新しい聴衆をも生み出したホールだと思っています。
東京文化会館の音楽監督に就任するにあたって、いくつかヴィジョンがあります。
まずは、年代的にも音楽ジャンル的にも幅広いお客様にいらしていただけるようにしたいと考えています。若い人も音楽のすばらしさを体験できるよう、“世代循環”とでもいうような、われわれが伝えていかなければならないものがあると思います。
また、最も東京らしいホールとして、東京の持つローカルなものをグローバルに発信していく。音楽世界を豊かにできるような多様性と新しい価値観なども見出して、東京文化会館は常にアクチャルなものが動いている、と実感していただけるような場所にできればと考えています。
東京文化会館は音楽資料室やリハーサル室もある複合的総合的な施設ですので、この機能を充分に発揮できるようにしたいと考えています。
演奏家としても作曲家としても自分が体験的に東京文化会館から得てきたものを、若い世代の聴衆をはじめ音楽文化に親しむすべての皆さまに受け渡していきたいと思います。
■ 野平一郎 出演公演
プラチナ・シリーズ第2回 野平一郎・堀正文・堤剛 ピアノ・トリオ
~日本が誇るレジェンド・トリオ~
2021.11/20(土)15:00 東京文化会館 小ホール