高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

聴いたらハマる! ネオ・クラシシズムの傑作群を一挙紹介

高関 健 (c)上野隆文

 ストラヴィンスキーは「三大バレエ」だけではない——20世紀音楽界に与えた影響の大きさと知名度に比して、創作の全体像は意外と知られていない作曲家だが、10月の高関健指揮の東京シティ・フィル定期「ストラヴィンスキー没後50周年記念プログラム」は、その全容を窺うきっかけになり得る。

 大管弦楽を完璧に操った1910年代前半の「三大バレエ」の後、第一次大戦とスペイン風邪流行の時期を挟み、20年頃から「新古典主義」と呼ばれる作風に変わった。古典的な管弦楽法で響きはシンプルながら、不可解なメロディーライン、落ち着かない不規則なリズム、なにより音楽がドライそのもの。できるだけ感動を排除しようとするかのような作風で、最初は聴く人を面食らわせるが、その語法に馴染み始めると妙にクセになる。

 今回選ばれたのはこの作風の4曲。真面目か冗談かわからないような小曲「小管弦楽のための組曲第2番」、端正でアルカイックな美をもつ弦楽合奏用の「ミューズを率いるアポロ」、カードゲームの様子が有名曲の断片を交えてユーモラスに展開する「カルタ遊び」、堂々とした力強さと奇妙な語法が同居する大作「3楽章の交響曲」。いずれもクールな音の運動や様々な楽器による瞬間芸が、独特の楽しさや未知のサウンドを生み出す。そのためには知的なアプローチと楽団の集中力ある名技が不可欠だが、深い関係を構築してきた高関&東京シティ・フィルならば、そこに“温かみ”までもが加わる、理想的なストラヴィンスキー解釈が披露されるはずだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年9月号より)

第345回 定期演奏会 
2021.10/14(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp