昨年傘寿を迎えた小林研一郎を、お得意のチャイコフスキーの交響曲全曲で日本フィルが祝う。コロナで延期となったこの企画が4月より仕切り直してスタートしたが、その記録が早くもディスクとなった。第4交響曲でもコバケン節が炸裂、力強いエネルギーを発散するが、とりわけ胸に沁みるのは第1だ。強烈なダイナミズムで武装する以前の、初期チャイコフスキーのピュアな抒情性の発露を、息のあったコンビが的確に音にしていく。「冬の日の幻想」というタイトル通り、第2楽章では切々と訴えかけるメランコリーが、冷えた体を暖炉のように温めてくれる。魅力を再発見させてくれる一枚だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年7月号より)
【information】
CD『チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」&第4番/小林研一郎&日本フィル』
チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」・第4番
小林研一郎(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
収録:2021年4月、サントリーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00750(2枚組) ¥3500(税込)