吉田 誠 (クラリネット)

底知れぬ大器が超豪華メンバーと競演!

(C)Akira Muto
(C)Akira Muto

吉田誠は、型破りのクラリネット奏者だ。何しろ15歳で楽器を始めながら、17歳で松方ホール音楽賞の大賞を受賞し、18歳で大阪フィルと共演しているから驚き。プロに至る経緯は実に興味深いのだが、誌面のスペースの都合上(残念!)要点のみ記すと、「音楽教育者の両親のもと1987年兵庫県に生まれる。吹奏楽部で楽器を始めたがすぐに辞め、いきなり第一人者の浜中浩一氏に師事。現役合格した東京芸大を半年で辞めて渡仏し、パリ音楽院とジュネーヴ音楽院で研鑽を積む。その後はソロや室内楽で活躍しながら、ロームの音楽セミナーにて、小澤征爾とウィーン音楽大学の湯浅勇治に指揮を学んでいる」となる。2007年東京音楽コンクールで第1位を獲得。11年から今年まで4年連続、サイトウ・キネンの「兵士の物語」に招聘されている。
彼はこの4月、ウィーン・フィルや国立歌劇場のメンバーを中心とした「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」の公演に出演。音楽監督を務める大御所ペーター・シュミードルと共に、クロンマーの「2つのクラリネットのための協奏曲」を、東阪名などで演奏する。
「言葉にならないほど光栄。今後の音楽人生にずっと残る貴重な体験になると思います。ともかく何でも吸収したいですし、楽しみで仕方ありません」
クロンマーの曲を生で聴く機会は稀だ。
「高貴なウィーンらしさを感じる、本当にいい曲。3楽章構成で、舞曲調の場面などを交えながらも、“ウィーンのエレガンス”が終始保たれています。2人が対等に書かれていますので、異なる音色の対話も妙味。CDより生で聴く方が絶対面白いと思います」
すでにシュミードルと合わせる機会ももった。
「演奏しながら一緒に作っていこう…といった雰囲気の楽しいリハーサル。とても温かく、私の力を自然に引き出してくれる方だと感じました。指揮の湯浅先生からウィーン流の教えも受けていたおかげで、アゴーギクや和声の捉え方など、自然に入ってくる部分も沢山あります」
彼はクラリネットの魅力をこう話す。
「音域が広く、しかも各音域に名前が付いているほど多彩な音色をもった楽器。ダイナミクスの幅広さや、人間の声に近い点も魅力です。大きな可能性を秘めた楽器だと思いますし、もっとメジャーにしたいですね」
影響を受けた音楽家は「小澤征爾、アバド、ストルツマンなど数きれないほどです」、また指揮を勉強するのは「クラリネットの名曲は大半が作曲家の晩年の作。指揮ならもっと広い範囲の音楽を学べるから」だし、「クラリネットも指揮も“伝える手段”。結局音楽が好きなんでしょうね」と語る。
日本管楽器界の枠にとどまらない頼もしさを感じさせる彼の音楽に、今回ぜひ触れてみたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年3月号から)

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
ウィーン・プレミアム・コンサート 〈プログラムA〉
★4月12日(土)・仙台/東京エレクトロンホール宮城 Lコード:24473
15日(火)・大阪/ザ・シンフォニーホール Lコード:81375
16日(水)・サントリーホール(完売)
17日(木)・札幌コンサートホールKitara Lコード:16911

ウィーン・グランド・コンサート〈プログラムC〉
★4月11日(金)・愛知県芸術劇場コンサートホール(完売)

問:トヨタ・マスター・プレイヤーズ事務局03-5210-7555
※上記は、吉田誠が出演するプログラムAとCの日程のみ。ツアーの詳細はトヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンのウェブサイトでご確認ください。