東京藝術大学ののちパリで学んだ、藤原亜美と長尾洋史。初セッション以来、音楽的相性が抜群だという二人による、10年ぶりのアルバム。ドビュッシーの連弾曲の代表作「小組曲」は、ピタリと合った自然な呼吸で流れ、スケールは十分ながら、二人のピアニストによる演奏だということを忘れさせる。交響詩「海」はカプレによる2台ピアノ編曲版を収録。20の指が奏で分ける多彩な音がシンフォニックに響き、緻密に、幻想的に、移り行く情景を描写する。「白と黒で」では、ドビュッシーが2台のピアノに託した空白と厚い響きのコントラストが、丁寧に再現されている。
文：高坂はる香
（ぶらあぼ2021年5月号より）
【information】
CD『ドビュッシー ピアノ・デュオ作品集／藤原亜美＆長尾洋史』
ドビュッシー：小組曲、民謡の主題によるスコットランド行進曲、6つの古代のエピグラフ、おもちゃ箱、牧神の午後への前奏曲、リンダラハ、神聖な舞曲と世俗的な舞曲、海、白と黒で
藤原亜美 長尾洋史（以上ピアノ）
たきいみき（語り）
録音研究室（レック・ラボ）
NIKU-9034,35（2枚組） ￥3300（税込）