【CD】おのふじの憧れ/小野富士&野田清隆

 ヴィオラの魅力のひとつは、弾き手の“年輪”が感じられやすいことかもしれない。NHK交響楽団の元・次席奏者、モルゴーア・クァルテットの一員としてもおなじみの名奏者、小野富士が満を持して挑んだアルバムに接し、しみじみ感じ入る。自身が10代の時期に夢中になった「素敵なメロディ」に満ちた作品をぜひ、という小野の思いが反映された3曲は、メロディと技巧が魅力的な、広く聴かれるべきオリジナルの佳品ばかり。演奏には彼の温かい語り口と、音楽への厳しい姿勢の両面が刻印されている。特に小野の奏でる低いC線の響きの豊かさと深みは、やはり経験を重ねた匠ならではのもの。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年11月号より)

【information】
CD『おのふじの憧れ/小野富士&野田清隆』

エネスク:ヴィオラとピアノのための演奏会用小品/ヴュータン:ヴィオラ・ソナタ 変ロ長調/ベンジャミン:ヴィオラ・ソナタ

小野富士(ヴィオラ)
野田清隆(ピアノ)

日本アコースティックレコーズ
NARC-2153 ¥2500+税