【CD】ラヴェル作品集 /辻井伸行&佐渡裕&トーンキュンストラー管

 ピアノ協奏曲は気心が知れたコンビによる鮮度の高いライヴ録音。全体に辻井の瑞々しいピアノが光り、中でも第2楽章冒頭の長いソロの味わい深さに進境が示されている。さらには第3楽章の生き生きとした疾走感も心地よい。管弦楽曲も好演揃いで、特に「亡き王女のためのパヴァーヌ」のしなやかさと絶妙な抑揚、「ダフニスとクロエ」の精緻さと躍動感には大いに魅せられる。デリケートな「月の光」のアンコールも素敵だ。一枚で、協奏曲、管弦楽曲(「ダフニス」では合唱も)、ソロを楽しめる、佐渡&辻井入門にもラヴェル&フランス音楽入門にも最適なアルバム。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年8月号より)

【information】
CD『ラヴェル作品集 /辻井伸行&佐渡裕&トーンキュンストラー管』

ラヴェル:ピアノ協奏曲、亡き王女のためのパヴァーヌ、ボレロ、「ダフニスとクロエ」第2組曲/ドビュッシー:月の光

辻井伸行(ピアノ)
佐渡裕(指揮)
トーンキュンストラー管弦楽団
ノイエ・ヴィーナー・シュティメン(合唱)

収録:2018年6月、ウィーン(ライヴ) 他
エイベックス・クラシックス
AVCL-84109 ¥2500+税