ARK Hills Music Week 2020 サントリーホール ARKクラシックス

若きふたりを中心に多彩な顔ぶれが集う3日間の祭典

左:辻井伸行 右:三浦文彰
C)Yuji Horii
 サントリーホールとアークヒルズを中心に2011年から開催されてきた「ARK Hills Music Week」の新機軸として、18年秋から始まった『サントリーホール ARKクラシックス』。ピアノの辻井伸行とヴァイオリンの三浦文彰、ふたりの若きスターがアーティスティック・リーダーとなり、世界トップクラスの音楽家が集う音楽祭として、早くも秋の人気のイベントとなっている。

 今年も10月に3日間“無事に開催される”ことになったが、その意義は例年以上に大きい。新型コロナウイルスによりクラシック公演は甚大な影響を受けているが、舞台上のことに限れば、人数の少ない室内楽や室内オーケストラは、その影響は通常のオーケストラなどよりは小さい。この編成のコンサートがより盛んになっていくはずで、「ARK」はその代表的存在としても期待される。

 また、昨年誕生して好評を博した室内オーケストラ「ARKシンフォニエッタ」が登場し、三浦が弾き振りだけでなく“指揮のみ”でも出演するのが注目だ。

 今回は3日間で8公演が予定され、取り上げられる作曲家はモーツァルトと生誕250年のベートーヴェンのみ。ウィーン古典派の2大作曲家の名作をたっぷり楽しめる。

 各公演を簡単に見ていくと、まず初日の10月2日は、「〔公演1〕三浦文彰 辻井伸行 モーツァルト&ベートーヴェン」と題し、三浦と江口玲(ピアノ)がベートーヴェン「春」など2曲、辻井が「ワルトシュタイン」など2曲で、両作曲家による王道のソナタ集で開幕する。

 10月3日は4公演。「〔公演2〕モーツァルト 室内楽名曲選」は田村響(ピアノ)、小林美樹(ヴァイオリン)、佐藤晴真(チェロ)らがピアノ四重奏曲第1番などで共演。「〔公演3〕三浦文彰のクロイツェル、辻井伸行のハンマークラヴィーア」は、両大曲を三浦(共演ピアノは江口)と辻井が渾身の演奏で聴かせる。夕方は「〔公演4〕ベートーヴェン 弦楽四重奏名曲選」で、第11番「セリオーソ」と第12番、中後期の名品がアルティ弦楽四重奏団(豊嶋泰嗣、矢部達哉、川本嘉子、上村昇)の練り上げられた演奏で味わえる。夜は「〔公演5〕三浦文彰 辻井伸行 ARKシンフォニエッタ《モーツァルト》」。三浦の弾き振りでのヴァイオリン協奏曲第3番に、辻井のピアノ協奏曲第21番ほかで、後者は三浦が指揮を務める。

 10月4日は「〔公演6〕辻井伸行 ベートーヴェン3大ソナタ」でスタート。「悲愴」「月光」「熱情」のセットを、辻井の演奏でまとめて聴けるのは貴重なチャンス。「〔公演7〕ベートーヴェン室内楽名曲選」は、ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」などの佳品を三浦舞夏(ピアノ)、矢部優典(チェロ)らフレッシュなアーティストたちで聴ける。最後は「〔公演8〕三浦文彰 辻井伸行 ARKシンフォニエッタ《ベートーヴェン》」。ヴァイオリン協奏曲を三浦の弾き振り、メインのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を辻井のピアノ、三浦の指揮で。昨年までは彼らのデュオが本イベントの中心だったが、今回はソリストと指揮者としての共演しかないため、いっそうの注目が集まる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年8月号より)

2020.10/2(金)〜10/4(日) サントリーホール 大ホール&ブルーローズ(小) 
7/19(日)発売
問:チケットスペース03-3234-9999
https://avex.jp/classics/arkclassics2020/