鬼才も認める逸材がヴェールを脱ぐ
昨年2月のクルレンツィス指揮ムジカエテルナのサントリーホール公演で、前代未聞の出来事が起きた。前半の演目(管弦楽曲)終了後に、突然コンサートマスターのソロでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第3楽章がアンコールとして演奏されたのだ。ソロは濃厚かつ鮮烈。別公演でコパチンスカヤが弾いた曲を、異なる表現で鮮やかに聴かせた。さらにはイザイまで。満場を仰天させたその奏者アイレン・プリッチンが、3月に日本初リサイタルを行う。実は彼、2014年のロン=ティボー国際コンクールで優勝し、ヴィエニャフスキ、クライスラー等のコンクールでも良績を残した1987年ロシア生まれのソリスト。モスクワ・フィルやロシア国立響等とも共演し、CDもリリースしている。
ストラヴィンスキー、ブラームス、プロコフィエフ(得意の作曲家)、ラヴェルの作品が並ぶ今回のプログラムは、技術とセンスが問われる好内容。ピアノの共演は長谷川美沙。ここは“オイストラフ以来の天才”と評される逸材の真価を知るために、ぜひ足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年3月号より)
*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は中止となりました。(3/3主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
2020.3/11(水)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
http://www.nikkei-hall.com