レジェンドと新鋭の演奏が勇気を与える
小児がんと闘う子どもたちを支援するキャンペーンの一環として、2007年から行われているクラシック・ヨコハマ『生きる〜若い命を支えるコンサート』が、19年も新春の横浜で開催される。今回は、前橋汀子がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を、金子三勇士がリストのピアノ協奏曲第1番を、それぞれ渡邊一正指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団と共演するという豪華な内容。ふたりに公演への意気込みを聞いた。
前橋「メンデルスゾーンの協奏曲は、これまで数えきれないほど演奏してきましたが、弾くたびに新たな発見があり、毎回緊張感とともに、新鮮な気持ちで臨んでいます。だんだんとオーケストラの楽器の音が細部まで聞こえるようになってきたというのが、私の中での大きな変化でしょうか。コンサートの前はいつもスコアを持ち歩いて、曲全体の構成やテンポについて勉強しています」
金子「リストの協奏曲第1番は、14年に今は亡きマエストロ、ゾルタン・コチシュの指揮で共演させていただいた思い出の曲です。僕は子どもの頃、コチシュさんのアルバムを聴いて“ピアニストになりたい!”と決意したこともあり、本当に幸せなひとときでした。マエストロからは“もっとハンガリー人らしく弾いていいよ。最初の部分に関しては、きれいな音を目指す必要はまったくない。とにかく情熱的にはじめてみてごらん”とアドバイスをいただきました。それからは、自分の中に流れるハンガリーの血を奮い立たせて弾いています」
若いときに海外へと渡り、さまざまな困難を乗り越えながら夢を叶えたふたりの演奏は、病気と闘う子どもたちに勇気を与えることだろう。
前橋「私は17歳でソビエト連邦に渡り、レニングラード音楽院(現サンクトペテルブルク音楽院)で学びました。黄金期にあったソ連の音楽界で、貴重な経験をたくさんしましたが、学生たちの日常生活は本当に厳しく、不便なものでした。練習室も満足になく、階段の踊り場やトイレの中でヴァイオリンを練習し、皆が命を懸けて切磋琢磨していた時代。けれど、その経験が今も人生の基盤になっています」
金子「僕は6歳のときに親兄弟から離れてハンガリーに渡りました。壁にぶつかったこともありましたし、リスト音楽院時代は身体を壊す一歩手前ぐらいまで勉強と練習に明け暮れた日々でした。僕が大切にしている言葉に“夢を小さく、目標を大きく”というのがあるのですが、大変なときこそ夢だけでなく、目標をしっかり持って、一歩一歩着実に歩みを進めていけたらと思います」
コンサートには、第72回全日本学生音楽コンクール全国大会の1位入賞者も出演予定。音楽界のレジェンドと新鋭、両方の演奏を味わいたい。
取材・文:原 典子
(ぶらあぼ2019年1月号より)
クラシック・ヨコハマ 生きる 〜2019 New Year 若い命を支えるコンサート
2019.1/14(月・祝)15:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川芸術協会045-453-5080/毎日新聞社事業本部03-3212-0804
http://yokohama.mainichi-classic.jp/